12月2日
画像1 ( C ) ESA/Hubble & NASA, G. Smith, H. Ebeling, D. Coe; CC BY 4.0
エリダヌス座方向にある銀河団・エイベル3192。もともとは1つの銀河団として認識されていたが、実は2つの銀河団からなるのではないかという説が広まり、ハッブル宇宙望遠鏡によってそれが確固たるものとなった。強い重力によって背景銀河の光が曲げられている(重力レンズ効果)様子もわかる。
ESAは1日、ハッブル宇宙望遠鏡によって撮影された2つの銀河団で構成される銀河団・エイベル3192の画像を公開した(画像1)。エイベル3192銀河団は目に見えないダークマターハロー(*注1)による膨大な質量を持ち、宇宙空間をゆがめてしまうほどの強い重力を持つ。この強い重力による重力レンズ効果によって、エイベル3192銀河団の左上と右下にある背景の銀河が、エイベル3192銀河団の縁に沿うように長く伸ばされている様子がわかる。また近年の研究により、この銀河団は強力なX線を放射するホットガスで満たされていることがわかっている。
エイベル3192銀河団は、エリダヌス座方向にある銀河団であり、1989年にエイベルカタログとして分類された。その際にはエイベル3192銀河団は単一の銀河団からなる銀河団として分類されていた。しかしその後の研究により、エイベル3192銀河団の密度分布において2つの濃い密度地点が存在することが判明し、実はエイベル銀河団が2つの銀河団で構成される銀河団であるのではないかという説が広まっていった。
実際にハッブル宇宙望遠鏡がエイベル3192銀河団の可視光観測を行った結果、画像1のように複数の銀河団からなる銀河団であることが判明した。ハッブル宇宙望遠鏡によってその姿が捉えられた後の研究において、写真中央左上の銀河団は地球からおよそ23億光年離れた場所にあり、写真中央の銀河団は54億光年離れた場所にあることが判明している。後者の銀河団は銀河団探索プログラムによって発見されたMCS J0358.8-2955銀河を含んでいる。またそれぞれの質量は太陽質量のおよそ30兆倍、120兆倍ほどあるとしている。
*注1 ダークマターが自己重力で集まった塊のこと。ダークハローあるいは暗黒ハローと呼ぶこともある。バルジ、円盤、ハローとともに銀河の基本構成成分である。ダークマターハローにガスが引きずり込まれて集まり、そのガスから星が生まれ、銀河が誕生すると考えられており、ダークマターハローはいわば銀河を宿す母体である。ダークマターハローが銀河の質量の大部分を担っており、星やガスの運動に大きな影響を与えている。渦巻銀河の平坦な回転曲線はダークマターハローが存在する証拠である。