5月25日
写真1 ( C ) ESA/Hubble & NASA, D. Thilker, J. Lee and the PHANGS-HST Team
ハッブル宇宙望遠鏡によって捉えられた渦巻銀河・NGC 4689の姿。
NASAは24日、まるで宝石のように輝く渦巻銀河・NGC 4689の姿を公開した(写真1)。2019年と2024年に近傍銀河観測を目的として、ハッブル宇宙望遠鏡(以下HST)によって観測されたデータを元に作成された写真である。銀河中心部分は明るく輝いている様子がわかる。また渦巻中の黒い部分はダストがある場所を示し、ピンク色の部分は星形成が行われている箇所を示している。
NGC 4689はかみのけ座(Coma Berenices)方向約5400万光年離れた場所に位置する。ちなみにかみのけ座は国際天文連合(IAU)が定義する88星座のうちのひとつであり、紀元前3世紀のエジプトの女王・ベレニケ二世にちなんでいる。ベレニケ二世は夫が戦争から無事に戻ると髪を切り、宮廷にある女神の神殿に備えた。しかし翌朝髪の毛がなくなっていた。ベレニケは大変怒っていたが、これを見た天文学者コノンが、「神は女王の行いが大変気に入っており、かつ髪の毛が美しいので大変に喜び空に上げて星座にした」と告げ、しし座の尾の部分を指し示した。この行動に対してベレニケ二世は大変喜んでいたとされる。この逸話にちなんでコノンが指し示した領域はかみのけ座という名前になった。Comaはラテン語で髪の毛を意味し、まさにNCG 4689は女王の髪の毛に位置しているということになる。
今回の写真は近傍銀河の観測プログラムとして行われたHSTの観測データを元に作成された。HSTは紫外線と可視光線を捉えており、赤外線を捉えるジェームズ・ウエッブ宇宙望遠鏡(JWST)の補完をする役割がある。現在はJWSTによる観測が盛んであるが、HSTがあってこそ近傍銀河の形成過程や進化過程を完全に理解することにつなげられる。