6月1日
写真1 ( C ) ESA/Hubble & NASA, D. Thilker.
ハッブル宇宙望遠鏡が捉えた棒渦巻銀河・NGC 4731の姿。
ESAは5月27日、ハッブル宇宙望遠鏡によって捉えられた棒渦巻銀河・NCG 4731の写真を公開した(写真1)。ハッブル宇宙望遠鏡に搭載された6つの異なる波長帯のフィルターを用いて撮影が行われた。銀河中のガスの雲やダストが存在する場所を示す黒い帯、星形成領域を示すピンク色の領域が写し出されている。全体的に長い棒状構造をしており、そこから2本の渦巻腕が伸びている様子がわかる。今回の観測はNGC 4731の中の物質やエネルギーの流れがどうなっているかを調査する目的で行われた
NGC 4731はおとめ座銀河団中に存在し、地球からおよそ4300万光年離れた場所にある。棒状渦巻銀河である。写真1に写る2本の渦巻腕は、おとめ座銀河団中の他の銀河との重量相互作用によって伸びていると考えられている。
棒状渦巻銀河は通常の渦巻銀河や楕円銀河よりも数が多くあり、全体の銀河の60%を占めている。棒状になる理由は、星とガスの軌道が一列に並び、密度の高い領域を作り上げて、長い年月をかけて個々の星々がその領域を出入りすることにあると考えられている。棒状渦巻銀河の棒状構造から伸びる渦巻腕も同様の理由で作り上げられると考えられている。
しかし通常の渦巻銀河も銀河中心の構造が成長するにつれて自然に棒状構造が形成されている。そして棒状ではない通常の渦巻銀河は、棒状構造が不安定になるにつれて、中心に集まった質量がどんどんまわりに流れていき、棒状構造を支えていた銀河中の星の軌道や重力相互作用が質量とエネルギーを星形成領域に運び込んでいると考えられている。
したがって棒状渦巻銀河が他の渦巻銀河と違ってどのようにして形成されるのかは未だに謎が多い。