6月8日
写真1 ( C ) X-ray: NASA/CXC/INAF/M. Guarcello et al.; Optical: NASA/ESA/STScI; Image Processing: NASA/CXC/SAO/L. Frattare.
チャンドラX線望遠鏡で捉えられた散開星団ウェスタールンド1の姿。真ん中にピンク色や白色で示された星が存在し、そのまわりをピンク色のガスが覆っている。背景にはハッブル宇宙望遠鏡で捉えられた星たちが写る。
イタリア国立天体物理学研究所のMario Guarcello氏を中心とする研究グループは4日、チャンドラX線望遠鏡を用いた観測により、大型星団・ウェスタールンド1まわりの6,000個に上るX線源のデータを得ることに成功したと発表した(写真1)。さらにデータ解析の結果、星団中のチャンドラX線望遠鏡によって観測された1,075個の星が、星団中心の4光年以内の領域に存在していることが判明した。4光年というと距離が長いと思われるが、天文学的にはかなり密度の高い領域になる。今回の観測結果は、天の川銀河の若い時代においてどのように星が形成されてきたかを研究する上で重要な成果であるとしている。
ウェスタールンド1は地球に最も近い大型散開星団であり、地球からおよそ13,000光年離れた場所にある。1年に数百もの星が作られるほど、活発的に星が作られる領域として知られており、その質量は太陽質量のおよそ5万~10万倍にもなる。このような大型散開星団は我々の住む天の川銀河には少ししかない。天の川銀河は、現在では1年においてわずかな量しか星が形成されないが、実は100億年前まではウェスタールンド1と同じように、1年に数百もの星が作られていたと考えられている。星団や銀河は若いほど星が多く作られると考えられており、ウェスタールンド1の年齢は300~500万年であると推定されていることから、多くの星を作ることが理論的にも考えられる。これらのことから、ウェスタールンド1のような大型散開星団から得られる情報は、天の川銀河ができたばかりの時代の星や惑星たちがどのようにして形成されたかを理解する手掛かりとなる。
今回研究チームは12日間にわたり、EWOCS(Extended Westerlund 1 and 2 Open Cluseters Survey)と呼ばれるプログラムのもと、チャンドラX線望遠鏡による観測を試みた。その結果、写真1のような詳細なX線データを得ることに成功した。若い星たちは白色やピンク色をしたものであり、星団全体がピンク、緑、青(ガスの温度が高い順)の色で示されたガスで覆われている様子がわかる。このガスは星団の形成・進化に深く関係しており、このガスを解析することでより正確な星団の質量を見積もることにつながる。背景にはハッブル宇宙望遠鏡で捉えられた青色や黄色の星が写っている。以前はチャンドラX線望遠鏡による観測で1,721個のソース源を特定したが、今回のEWOCSプログラムではかすかなX線しか出さない星や、太陽質量より小さな質量の星からのX線源を特定し、その数は6,000個にも上った。さらにデータ解析の結果、星団中心の4光年以内の距離に、チャンドラX線望遠鏡で観測された1,075個の星が存在することが判明した。
今後研究チームはチャンドラX線望遠鏡から得られたデータをさらに解析するとともに、ジェームズ・ウエッブ宇宙望遠鏡を含む他の望遠鏡から得られたデータを解析することで、ウェスタールンド1の詳細な姿を捉えることを目標にすることとしている。