ハッブル宇宙望遠鏡が捉えた球状星団・NGC 2005の姿

6月15日

 

 

 

写真1 ( C ) ESA/Hubble & NASA, F. Niederhofer, L. Girardi.

ハッブル宇宙望遠鏡によって捉えられた球状星団・NGC 2005の姿。中心にいけばいくほど、星が密に集まっている。

 

 NASAは10日、ハッブル宇宙望遠鏡によって撮影された球状星団・NGC2005の写真を公開した(写真1)。青い星と赤い星がたくさん散りばめられ、宝石箱を見ているような輝きを放っている。真ん中に質量の重い青い星が集中し、そのまわりに質量の軽い赤い星が散りばめられ、質量による住み分け(mass segregation)を起こしている。宇宙の化石とも呼ばれ、古くからある星や銀河がどのように進化してきたを知る手掛かりにもなる。

 

 NGC2005は地球からおよそ162,000光年離れた天の川銀河の伴銀河である大マゼラン雲中に存在する球状星団であり、大マゼラン雲の中心からは750光年離れた場所にある。球状星団は数万~数百万個ほどの星が自己重力によって球状に集まった天体であり、長期間安定した状態を保っている。また球状星団の年齢は数十億年ほどであり、古くからある星で構成されている。そのため球状星団を研究することは、古くからある星や銀河がどのようにしてできたかを知る手掛かりとなる。それはまるで地球にある化石燃料が過去にあった植物や動物の知見をもたらすようなものであり、今見える球状星団が昔の星や銀河の知見をもたらすことが期待されている。

 

 例えば現在の銀河進化理論では、銀河が他の銀河を吸収合併していくことで銀河団が形成されるという予想が立てられている。実際にこれまでに観測された銀河団も、銀河が小さな銀河をどんどん吸収合併することによってできあがってきたと考えられている。もしこれが本当に正しければ、今回公開された球状星団の写真に写る古い星々は、実際には宇宙の異なる環境でできあがったものであるということが予想される。逆に球状星団内の星を研究することでこの銀河進化理論があっているかを検証することにもつながる。

 

 今回公開された球状星団・NGC 2005は、銀河が衝突によって進化してきたことを証明する手掛かりになることが天文学者の間で期待されている。実際にNGC 2005は周りの環境とは少し異なり、大マゼラン雲とは異なる化学組成をしているとの研究結果も出ている。このことは大マゼラン雲の形成過程において他の銀河との衝突があったことを示唆している。もし吸収合併がなければ大マゼラン雲とは別の銀河は散り去っていったことだろう。また球状星団・NGC 2005を研究することで、大マゼラン雲と他の銀河との衝突過程を知る手掛かりになることが期待されるとしている。