JWSTが原始星から噴き出すジェットの姿を初めて捉えた

6月29日

 

 

 

写真1 ( C ) NASA, ESA, CSA, STScI, K. Pontoppidan (NASA’s Jet Propulsion Laboratory), J. Green (Space Telescope Science Institute).

ジェームズ・ウエッブ宇宙望遠鏡が捉えたへび座星雲の姿。左上に原始星から噴き出すジェットの姿(赤い塊状の線)が写る。

 

 ESAは20日、ジェームズ・ウエッブ宇宙望遠鏡(以下JWST)の近赤外線観測装置・NIRCamによってへび座星雲を捉えた結果、生まれたての星から伸びるジェットを初めて捉えることに成功したと発表した(写真1)。写真の左上において、赤みがかった太い線が斜めに走っている様子がわかる。これは原始星から噴き出したジェットが周りのガスや塵と衝突することによって加速した衝撃波が広がる箇所を示している。また赤い箇所には水素分子や一酸化炭素分子が存在する。

 

 へび座星雲は100~200万年前に生まれた星雲であり、比較的若い星雲である。地球からおよそ1300光年離れた場所にある。画像中心には生まれたばかりの星(10万年前に生まれた)が集中しており、これから太陽と同じくらいの質量を持つ星に成長していくと考えられている。またへび座星雲は、自ら光を出すのではなく、星雲中の塵がまわりの恒星からの光を反射することで輝いて見える反射星雲と呼ばれる星雲の種類に属する。

 

 今回公開されたJWSTによる観測画像(写真1)左上には、ジェットが赤い塊の流れのように写し出されている。この赤色は水素分子や一酸化炭素分子があることを示している。生まれたての星からはジェットと呼ばれるガスの流れが星の両極方向から噴き出すことが知られているが、このジェットが周りのガスと衝突するとあらゆる方向に流されていくのが通常の理論である。しかし今回の観測では、直線的にジェットが伸びていく様子が捉えられた。

 

 そこで注目されたのはこのジェットが直線的に進んでいくことがどのくらい星の回転と関わっているかということである。そもそも星が作られる際にはガスがある一点に集中して集められ、中心付近のガスは高速で中心回りを回ることになる。しかし実際の星の観測では中心付近のガスはある一定程度の回転速度で回っている。ここでどのようにして角運動量輸送が行われているかという問題が生じるが、現代の理論では、星の中心から噴き出すジェットによって角運動量輸送が行われているという考え方が一般的である。また星のまわりには降着円盤という物質が集まった円盤が存在し、そこから星の中心に向かってガスや塵が流れ込んでいる。ここには渦巻く磁場も存在し、この磁場が星の双極方向にジェットを噴き出す原動力となっている。

 

 現代天文学では、星や惑星形成においてどのような揮発性物質が存在するのかを決定することに注目が集まっている。揮発性物質は水や一酸化炭素を含み、比較的低温度で固体から気体になる化合物である。今回の観測結果を他の原始星円盤と比較することで、何か共通するものが見えないかを模索することも天文学者の間で検討されている。