ハッブル宇宙望遠鏡が捉えた矮小不規則銀河・NGC 5238の姿

7月20日

 

 

 

写真1 ( C ) ESA/Hubble & NASA, F. Annibali.

ハッブル宇宙望遠鏡が捉えた矮小不規則銀河・NGC 5238の姿。

 

 NASAは15日、ハッブル宇宙望遠鏡によって撮影された矮小不規則銀河・NGC 5238の姿を公開した(写真1)。たくさんの星が写り青みがかっており、中央には赤い星雲の姿も写る。全体的には丸いぼんやりとした形をしており、銀河というよりは星団のような形をしているようにも見える。星団のように見えるといいつつ、実はこのNGC 5238の内部と周りに明るく輝く球状星団が写っている。

 

 NGC 5238はりょうけん座方向およそ1,450万光年離れた場所にある。写真の通り丸くてぼんやりした形をしており、目立った特徴がなさそうに見えるが、逆に何か複雑な構造が隠されている可能性があると研究者の間では考えられており、研究の的となっている。通常の銀河や星団であれば、ガスやブラックホールなどのダークマターから形成され、長い年月をかけて重力相互作用によって銀河団へと姿を変えていく。ところがNGC 5238のような矮小銀河はぼんやりとした形をして銀河団は形成せず、初期宇宙でみられるような成長段階にある銀河の姿をしている。

 

 NGC 5238の形成理論については天文学者の間で研究がかなり進んでいる。NGC 5238は数十億年前に異なる銀河と衝突して、それぞれの銀河による重力相互作用によって写真のような歪められた構造ができあがった。非常に近くにある銀河でないとこのような歪んだ構造ができないため、衝突した別の銀河はNGC 5238の近傍銀河というよりは伴銀河である確率が高いとされている。またハッブル宇宙望遠鏡の観測データの解析結果から、この銀河の密度分布を確認したところ、NGC 5238と別の銀河の特徴はかなり異なっており、NGC 5238が別の銀河と衝突する前に既に別の銀河側で星形成がかなり進んでいることを示唆する結果が得られたとしている。またNGC 5238が別の銀河と衝突した際に、スターバースト(爆発的星形成)によって多くの星が形成された可能性が高い。

 

 NGC 5238の謎は未だに多いが、ハッブル宇宙望遠鏡が捉えた姿によってNGC 5238の形成過程について多くのことが解明された。これからもハッブル宇宙望遠鏡のデータ解析によって多くのことが解明され、宇宙がどのように進化してきたかを解明することにもつながるとしている。