8月14日
写真1 ( C ) NASA, ESA, CSA, STScI.
JWSTの近赤外線観測装置・NIRCamと中間赤外線観測装置・MIRIによって捉えられたArp 142銀河の合成画像。まるでペンギンと卵のような愛らしい姿をしているのが印象的である。
ESAは7月12日、ジェームズ・ウエッブ宇宙望遠鏡(以下JWST)によって捉えられた相互作用銀河・Arp 142の姿を公開した(写真1)。Arp 142は2つの銀河・NGC 2936(写真真ん中)、NGC 2937(写真左)で構成される。NGC 2936はペンギン(以下ペンギン)、NGC 2937が卵のような形をしているのが印象的である。この画像は2年かけて撮影された。
Arp 142はうみへび座方向3億2600万光年の場所に存在し、2500万~7500万年前に現在のような姿になったと考えられている。
まずペンギン銀河から見る。ペンギン銀河の目の部分が銀河中心であり、目の下からくちばし、頭、背中、しっぽにかけて渦巻腕が伸びている。そしてその渦巻腕から紙ふぶきを出すようにガスや塵が様々な方向に飛び散っている。ペンギン銀河のくちばしとしっぽの部分で新たな星が形成されており、多環芳香族炭化水素がJWSTによって検出された。
その一方で卵銀河は古い星で構成され、少しのガスと塵しかない。しかし回折スパイクがでるほど、星が密に集まっている様子がわかる。
ペンギン銀河は卵銀河よりも大きく見えるが、実はこれらの銀河はおよそ同じくらいの質量であると見積もられている。これが2つの銀河がまだ合併していない一つの理由であると考えられている。また同じくらいの質量であるがゆえに卵銀河は、ペンギン銀河から重力相互作用によって形をゆがめられることがない。さらにこれら2つの銀河間の距離は10万光年であり、天の川銀河とその近傍銀河であるアンドロメダ銀河間の距離が250万光年であることと比べると、かなり近い距離にある。しかしこれらの2つの銀河はこれから数億年かけて衝突合併をすると天文学者の間では予想されている。