8月25日
写真1 ( C ) ESO/M. Mattern et al.
アタカマパスファインダー実験機とVLT望遠鏡によって撮影された星形成領域・RCW 106の姿。
ESO(ヨーロッパ南天天文台)は19日、アタカマパスファインダー実験機(APEX)とVLT望遠鏡を組み合わせて撮影された星形成領域・RCW 106領域の画像を公開した(写真1)。赤く輝く部分は星雲であり、星の材料となる一酸化炭素ガスが濃くある場所を示している。
アタカマパスファインダー実験機はアタカマ砂漠に建設された口径12mの望遠鏡であり、サブミリ波からミリ波の波長の長い輝線を捉えることができる。主に一酸化炭素などのガスの分布を観測することができる。またVLT望遠鏡は可視光線を捉えることが可能である。今回公開された写真は、この2つの望遠鏡を組み合わせて作成された写真である。
星形成領域・RCW 106はじょうぎ座方向約1万2000光年先にある星形成領域であり、ミニ・スターバーストと呼ばれる大質量星形成の現場である。太陽質量のおよそ1000万倍の質量を持ち、巨大分子雲複合体として知られる。
写真1では星の材料となるガスの分布が赤い領域で示されているが、このガスのうち1%しか実際には星を作る際の材料にならないという結論が、今回Michael Mattern氏(フランス原子力・代替エネルギー庁)を中心とする国際研究グループによって示された。なぜこんなにも割合が低いのかは未だ解明されていない。普通に考えると、星を作るには多くのガスが必要であり、このガスが重力によって集まって重力収縮して新しい星が生まれると考えられる。ガスの密度が大きければ大きいほど多くの星が生まれると思われるが、なぜ観測されるガスの1%しか星形成に寄与しないのか。
国際研究グループが今回観測した星形成領域・RCW 106の星形成について、普通の星形成とは異なるという結論を出した。どのようにして星が作られるかというと、まず低温のガスがお互いの重力によって集まり、重力収縮してフィラメント構造を作り、コアが形成され、その中で星が生まれるという理論である。ガスの密度が濃い領域が星形成にとって効率が悪く、むしろフィラメントを作る段階で密度が濃いことが重要であることを示した。しかしこの星形成理論についても検討の余地が多く残されているとしている。
APEXによる観測は継続中であり、今後も多くの写真が撮影されることで、RCW 106星形成領域における謎が解明されることが期待されるとしている。