8月25日
写真1 ( C ) NASA, ESA, C. Gallart (Instituto de Astrofisica de Canarias), A. del Pino Molina (Centro de Estudios de Fisica del Cosmos de Aragon), and R. van der Marel (Space Telescope Science Institute); Image Processing: Gladys Kober (NASA/Catholic University of America).
ハッブル宇宙望遠鏡が捉えたきょしちょう座矮小銀河の姿。
NASAは23日、ハッブル宇宙望遠鏡によって捉えられたきょしちょう座矮小銀河の写真を公開した(写真1)。銀河であるにもかかわらず、あまり輝いておらず、どこかもの寂しさを感じる写真である。
きょしちょう座矮小銀河はきょしちょう座方向およそ300万光年先にある矮小銀河であり、古くからある星から成り立っている。また局所銀河群(天の川銀河やアンドロメダ銀河を含む銀河の群で半径およそ326万光年)の端にあり、ハッブル宇宙望遠鏡の打ち上げ時期と同じ年である1990年にR.J.Laveryによって発見された。きょしちょう座矮小銀河が他の矮小銀河と大きく異なる点がいくつかある。1つ目は他の矮小銀河に比べて質量が小さく、明るさが少ないことである。2つ目は塵がまばらに存在し、星密度が非対称なことである。そして3つ目は局所銀河群の質量中心から360万光年離れており、孤独な環境に存在することにある。なぜこんなにも局所銀河から離れているのかについては、およそ110億年前にアンドロメダ銀河との近接遭遇による効果によるものであると定説化されている。
きょしちょう座矮小銀河は古くから存在する天体であるため、宇宙の化石として天文学者から重宝されている。きょしちょう座矮小銀河を構成する化学成分を知ることで、このような孤独な環境にあった銀河に含まれる星の化学成分を知ることができたり、昔あった銀河団の化学成分を知ることができるからである。またきょしちょう座銀河を詳しく調べることで、銀河の成り立ちを知ることにつながることも期待されている。
今回ハッブル宇宙望遠鏡によって銀河の形成過程を調べるべく、きょしちょう座矮小銀河の撮影が行われた。この観測データを解析することによって宇宙の初期にあった再電離期における星形成についても研究が進むことが期待されるとしている。