JWSTが捉えた天の川銀河最外縁部に存在する分子雲・Digel Cloudsの姿

9月16日

 

 

 

写真1 ( C ) NASA, ESA, CSA, STScI, M. Ressler (NASA-JPL).

ジェームズ・ウエッブ宇宙望遠鏡が捉えた天の川銀河最外縁部にある分子雲・Digel Clouds 2Sの姿。

 

 ESAは12日、ジェームズ・ウエッブ宇宙望遠鏡(以下JWST)の近赤外線観測装置(NIRCam)と中間赤外線観測装置(MIRI)によって捉えられた天の川銀河最外縁部にある分子雲・Digel Clouds 2Sの写真を公開した(写真1)。写真中央に青、赤、白色の星がたくさん集まる星団の姿が綺麗に写し出されているところが印象的である。今回の観測結果は星形成の詳細を研究する上で重要な資料になるとしている。

 

 天の川銀河最外縁にあるDigel Cloudsは天の川銀河中心からおよそ58,000光年離れた場所にあり、2つの分子雲からなり、研究上4つの領域に分けられている。それぞれDigel Clouds 1A、1B、2N、2Sに分類される。これらの領域では爆発的に星が形成される現象・スターバーストが起きており、アウトフローやジェットを伴う若い原始星が生まれたり、特徴的な星雲構造を持つ。また我々がいる太陽系近傍に比べて、低金属量であり、ガス密度が低いという特徴がある。

 

 今回JWSTによって捉えられたDigel Clouds 2Sの写真が公開された(写真1)。写真1の中央には、新しく生まれた星で構成された星団が存在し、ここに存在するいくつかの星は極方向にジェットを放出している。既に天文学者の間でDigel Clouds 2Sに星団が存在することが予測されていたが、実際にその様子が確かめられたのは今回が初めてである。さらに今回の観測データを泉奈津子氏(岐阜大学)を中心とする研究チームが解析した結果、この星団からあらゆる方向にたくさんのジェットが放出されている様子を捉えることに成功したと発表した。研究チームにとっては今回の観測がスタート地点であり、今後さらにデータ解析を進めて、Digel Cloudsにおける様々な質量を持つ星に関する疑問を解決することを目指していくとしている。

 

 今回の観測データを用いて、天の川銀河最外縁部という特殊な環境が星形成にどのように影響を及ぼすのかの研究が進むことが期待される。