太陽系に最も近い単一の星・バーナード星まわりの太陽系外惑星が発見された

10月5日

 

 

 

画像1 ( C ) ESO/M. Kornmesser

バーナード星と太陽系外惑星・バーナード bのイメージ図。

 

 Jonay González Hernández氏(カナリア天体物理学研究所・スペイン)を中心とする国際研究チームは1日、ESO(ヨーロッパ南天天文台)のVLT望遠鏡を用いた観測により、太陽系に最も近い単一の星であるバーナード星まわりの太陽系外惑星を発見したと発表した。この太陽系外惑星はバーナード b(Barnard b)と名付けられ、少なくとも金星の半分以上の質量を持ち、3.15日でバーナード星周りを1周してしまうほどバーナード星に近い距離にある。ただし表面温度が125℃であるため、生物生存に必要な液体の水がなく、生物生存可能性はほとんどないとしている。さらに今回の観測データから、様々な軌道運動をする3つの太陽系外惑星候補が存在することが示唆されるとしている。

 

 バーナード星は太陽系に最も近い単一の星であり、地球からおよそ6光年ほどの距離に位置する(ちなみに太陽系に最も近い星はαセンタウリ星系3重連星)。その近さから、地球のような太陽系外惑星探査を行う上で格好の対象となっている。2018年にバーナード星における太陽系外惑星が存在する兆候が初めて発見されたが、これまでに明確にその存在を確かめることができていなかった。

 

 国際研究チームは、生物生存可能性があり穏やかな気候であると考えられるバーナード星まわりの領域の太陽系外惑星を探すこととした。そのような場所であれば生物生存に必要な液体の水が惑星表面に存在するからである。またバーナード星のような赤色矮星では、低質量の岩石型惑星が太陽系のような系よりも見つかりやすいと考えられていた。観測するにあたっては、VLT望遠鏡に搭載されたESPRESSOと呼ばれる観測機器を用いた。ESPRESSOは、太陽系外惑星と中心星の重力相互作用による中心星の揺らぎを捉えることで、太陽系外惑星の発見をすることができる観測装置である。

 

 今回実際に国際研究チームがおよそ5年に渡るVLT望遠鏡による観測を行った結果、バーナード星まわりの太陽系外惑星を初めて発見することに成功した。Jonay González Hernández氏は「長い時間がかかったが、私達はいつもバーナード星まわりで何かが見つかることを確信していた」とコメントしている。今回発見されたバーナード bは、太陽-水星間の距離のおよそ1/20しか中心星から離れておらず、中心星まわりをおよそ3.15日という短い周期で公転していることが判明した。また表面温度は125℃であり、水が蒸発してしまうため、生物生存可能性はほとんどないとしている。González Hernández氏は、「バーナード bは最も質量の低い太陽系外惑星であると同時に、地球の質量よりも低い。中心星の表面温度は太陽よりも2500℃低いが、バーナード bがあまりにも中心星に近いため、液体の水を表面に保つことは難しく、生物生存可能性はほとんどない」とコメントしている。ただし今回の観測で2018年に太陽系外惑星の候補天体として発見された天体を見つけるには至らなかった。

 

 さらに研究チームは、バーナード星まわりの3つの太陽系外惑星候補天体の兆候を発見することに成功した。これらが太陽系外惑星であることを証明するには、追観測が必要であるとしている。

 

 現在建設中のELT望遠鏡に搭載される予定のANDESが、バーナード星まわりの詳細な情報を得て、太陽系外惑星の発見につなげるとともに、その大気の様子を捉えることが期待されるとしている。

 

 

画像2 ( C ) IEEC/Science-Wave – Guillem Ramisa

太陽とバーナード星の位置関係。