10月12日
写真1 ( C ) ALMA (ESO/NAOJ/NRAO)/L. Rowland et al./ESO/J. Dunlop et al. Ack.: CASU, CALET
アルマ望遠鏡の可視光・赤外線観測によって捉えられた、観測史上最遠方にある渦巻銀河・REBELS-25の姿。宇宙がビッグバンによって誕生してからわずか7億年後の遠い宇宙にある渦巻銀河である。
写真2 ( C ) ALMA (ESO/NAOJ/NRAO)/L. Rowland et al.
ALMA望遠鏡によって捉えられた渦巻銀河・REBELS-25の解析結果を示した2枚の画像である。左側はREBELS-25における冷たい一酸化炭素ガスの分布を示している。右はこの銀河中のガスの動きを示したものであり、青色は地球に向かう方向、赤色は地球から遠ざかる方向に進んでいることを示し、暗い色ほど速く動いていることを示す。明らかにこの銀河が回転運動をしていることがわかる。
Lucie Rowland氏(ライデン大学博士課程学生・オランダ)を中心とする研究チームは7日、アルマ望遠鏡を用いた観測により、観測史上最も遠くにある渦巻銀河を発見することに成功したと発表した(写真1)。この銀河はREBELS-25と名付けられ、宇宙が誕生してからわずか7億年後(宇宙年齢は138億年)というはるか昔にできた渦巻銀河である。これまでの銀河形成理論モデルでは、宇宙年齢初期における銀河はまだ混沌とした状態であり、形が整っていないと考えられていたが、今回の観測結果によりその理論モデルの再考が迫られるとしている。
これまでの銀河形成理論モデルでは、天の川銀河のような渦巻銀河は、最初はガスや塵などの塊が混とんと集まった状態から始まり、銀河のサイズとしては小さく、他の銀河と衝突合体をしながらサイズを大きくし、長い年月をかけて徐々に重力相互作用によって渦をまくような構造になっていくと考えられていた。このように整った渦巻銀河ができるまでには数十億年もの年月が必要だとされていた。
今回研究チームはアルマ望遠鏡による観測によって、REBELS-25と名付けられた観測史上再遠方渦巻銀河を発見することに成功した。この銀河は宇宙が誕生してからわずか7億年経過後にできた渦巻銀河であり、宇宙年齢が138億年であることを考慮すると、初期宇宙に誕生した渦巻銀河ということになる(なお宇宙は加速膨張をしているため、遠くにあればあるほど、遠い昔の宇宙を見ているということになる)。研究チームはアルマ望遠鏡による観測でこのREBELS-25のデータを解析した結果、写真2のようなデータを得ることに成功した。写真2の左は冷たい一酸化炭素ガスの分布を示しており、中央に棒状構造があり、渦巻腕があることが見て取れる。また右側の写真では一酸化炭素ガスの回転構造を示しており、青色は地球の方向に向かって進む成分、赤色は地球から遠ざかる方向に動いていることを示しており、暗い色であるほど速く動いている。このことから、この銀河が明らかに回転運動を示していることが明らかになった。しかしこの銀河が渦巻銀河であることを証明するには更なる追観測が必要であるとしている。Lucie Rowland氏は「遠くの宇宙にある銀河・REBELS-25が天の川銀河と非常に似た構造をしていることは、これまでの銀河形成理論モデルを覆すことになり、どのようにして初期宇宙で素早く進化してきたかの理解を進める必要がある」とコメントしている。
今後は渦巻銀河・REBELS-25の詳細な観測を進めると共に、他の初期宇宙における渦巻銀河を発見していくことによって、初期宇宙における銀河進化、さらには宇宙全体の進化の理解につながることが期待されるとしている。