10月20日
写真1 ( C ) NASA, ESA, M. Stute, M. Karovska, D. de Martin & M. Zamani (ESA/Hubble).
ハッブル宇宙望遠鏡が捉えた、地球からおよそ700光年の位置にある共生星・みずがめ座R星の姿。真ん中に白色惑星と赤色巨星からなる連星系があり、回折スパイクがX字に出るほど光り輝いている。上下左右に星雲が伸び、連星系付近ではスパイラルパターン状に伸びる星雲の姿が写る。
NASA/ESAは16日、ハッブル宇宙望遠鏡(以下HST)によって捉えられた共生星・みずがめ座R星(R Aquarii)の姿を公開した(写真1)。真ん中に白色矮星と年老いた赤色巨星からなる連星系が存在し、赤色と緑色で示された星雲が上下左右に伸びている様子がわかる。また連星系近傍では、シアン色に輝く星雲がスパイラルパターン状に伸びている様子が写し出され、とても美しい姿をしている。2014年~2023年までHSTによる観測が行われ、スパイラルパターンができあがるまでのタイムラプス映像も公開されている。
共生星・みずがめ座R星はみずがめ座方向およそ700光年離れた場所にあり、地球に最も近い共生星である。ハッブル宇宙望遠鏡の名付け元である天文学者エドウィン・ハッブルによって多くの研究が行われた。共生星とは年老いた赤色巨星と白色矮星の連星系で、スペクトルに特異な特徴を持つ星のことである。特にみずがめ座R星を構成する赤色巨星は、太陽の400倍以上の大きさを持つと推定されるミラ型変光星であり、390日周期で変光を行い、およそ750倍ほどの明るさ変化だけでなく、温度変化も生じる。最も明るく輝くときで太陽光度のおよそ5,000倍に到達する。また白色矮星は44年周期で共通重心まわりを周るが、最も赤色巨星に近づいたときに、水素ガスを吸収し、白色矮星周りの降着円盤に水素ガスが積もることで、爆発現象や、ジェットの放出が起こる。爆発現象は超新星として分類されるが、この爆発現象によって水素やヘリウムよりも重い重元素、例えば炭素や窒素、酸素などの生命維持活動に欠かせない物質が宇宙空間に放出される。
みずがめ座R星はこれまでに多くの激しい超新星を起こし、光り輝くガスで構成されるフィラメントを多く放出してきた。この現象は宇宙にある星の内部にある物質や、星から放出されるジェットによって放出される物質が、どのようにして宇宙に再分配されるかを研究する上で多くの情報をもたらした。
今回公開された写真では、フィラメントはプラズマガスからなる星雲として上下左右に広がり、ループ状に存在し、磁場も形成する。このループ状に存在する星雲は「Cederblad 211」と呼ばれ、過去の超新星によってできあがったものであると考えられている。そしてこの星雲は、みずがめ座R星からおよそ4,000億kmという遠く離れた場所まで伸びていると推定されている。またみずがめ座R星から放出されるフィラメントは、自分自身に戻ってくるようにスパイラルパターンを形成している様子がわかる。