11月3日

 

 

 

写真1 ( C ) NASA, ESA, CSA, STScI.

ハッブル宇宙望遠鏡とジェームズ・ウエッブ宇宙望遠鏡によって捉えられた連銀河IC 2163・NGC 2207の合成画像。

 

 

写真2 ( C ) NASA, ESA, CSA, STScI.

左の写真が、ハッブル宇宙望遠鏡によって捉えられた連銀河IC 2163・NGC 2207の写真。右側はジェームズ・ウエッブ宇宙望遠鏡によるもの。

 

 ESAは10月31日、ハッブル宇宙望遠鏡(以下HST)とジェームズ・ウエッブ宇宙望遠鏡(以下JWST)によって撮影された連銀河IC 2163・NGC2207の姿を公開した(写真1)。JWSTの中間赤外線観測装置とHSTの可視光・紫外線観測で撮影された写真であり、2つの目が暗い宇宙を見つめるような顔をした写真である。写真1の左の銀河はIC 2163と名付けられ、数百万年前に形成されたと考えられている右側の銀河NGC2207の背後をかつて通過したと考えられている。2つの銀河はお互いの重力相互作用で引き寄せられるような格好となっている。

 

 連銀河とは、2つの銀河が重力的に束縛しあった系のことである。連銀河IC 2163・NGC 2207はおおいぬ座方向約1億2000万光年離れた場所にある。

 

 今回公開された写真1をみると目のまぶたを含む渦巻腕が赤く輝いている箇所があり、ここでは2つの銀河から出る物質同士がぶつかり合い、衝撃波面を形成していると考えられている。また2つの銀河間の重力相互作用によって渦巻腕が歪められている様子がわかる。例えば左の銀河IC 2163の左側の部分で腕が拡散されたような様子を示している。またそれぞれの銀河の中心間から、つるのようなものが垂れ下がっている様子がわかる。

 

 連銀河・IC 2163・NGC 2207では、銀河中心から渦巻腕にかけて、効率よく星形成を行っていると考えられている。この中では毎年1年ごとに太陽と同じ大きさの星をおよそ24個作っており、我々が住む天の川銀河では1年にせいぜい2、3個しか太陽と同じ大きさの星を作っていないのに比べて、多くの新しい星を作っていることがわかる。またこの連銀河ではここ10年で7個の超新星が発生したと考えられている。天の川銀河では50年に1度の割合で超新星が発生している事実と比べると、高い割合で超新星が発生していることもわかる。超新星が発生するとそれが発生した渦巻腕中の空間が綺麗になり、再び冷たいガスと塵が供給され新しい星が作られる。図2はHST(左の写真)とJWST(右の写真)で画像が分かれているが、右の写真で白い渦巻腕の中にひも状の穴が存在するが、ここで過去に超新星が起きたと考えられている。また右の写真でNGC 2207の右下の回折スパイクを出すピンク色の領域が小規模な爆発的星形成・ミニスターバーストが起きている箇所であり、左の写真では同じ領域のところが青く光輝いている様子がわかる。

 

 連銀河・IC 2163・NGC 2207は将来的に数百万年以上の年月をかけて重力相互作用により合併すると考えられている。そして完璧な渦巻腕の形を形成し、一つの渦巻銀河として佇むことになり、星形成率も低くなることが予測されている。