11月30日
写真1 ( C ) ESA/Webb, NASA & CSA, A. Leroy.
ジェームズ・ウエッブ宇宙望遠鏡によって撮影された、はと座方向およそ4,000万光年先にある渦巻銀河・NGC 2090の姿。楕円形の形をしており、銀河中心には明るく輝くコアがあり、そこから2本の渦巻腕が出ている。 渦巻腕に沿って塊状の斑点がたくさん存在するが、その部分で星形成が行われている。
ESAは27日、ジェームズ・ウエッブ宇宙望遠鏡(以下JWST)の中間赤外線観測装置(MIRI)と近赤外線観測装置(NIRCam)によって捉えられた、はと座方向にある渦巻銀河・NGC 2090の姿を公開した(写真1)。2つの渦巻腕があり、ガスと塵が壮大に渦を巻くように存在しているのが印象的である。
渦巻銀河・NGC 2090は、宇宙の膨張率を表すハッブル定数の測定精度向上のために、ハッブル宇宙望遠鏡による観測が数多く行われ、研究が進められてきた銀河のうちの一つである。この渦巻銀河近くにあるセファイド変光星の観測を行うことで、ハッブル定数の決定が行われてきた。こうしたセファイド変光星によるハッブル定数の決定は1998年に初めて行われ、その時にはNGC 2090が地球からおよそ3,700万光年離れた場所にあると決定された。しかし最新のハッブル宇宙望遠鏡による可視光・紫外線観測によると、NGC 2090は少し地球から遠ざかり、4,000万光年離れた場所にあると決定された。またNGC 2090は1998年以前にも、星形成を行う代表的な銀河として多くの研究がなされてきていたが、全体的な詳細な姿が捉えられておらず、ただの塵が集まった羊毛状にふわふわとした銀河であるとの認識しかされていなかった。
今回公開された写真は、ハッブル宇宙望遠鏡によるハッブル定数決定のための観測と同時並行で、JWSTのMIRIとNIRCamによって撮影されたものである。特にNIRCamによる撮影では、渦巻腕を正確に捉えており、銀河中心付近の青色の星の姿も詳細に捉えている。また中間赤外線観測装置はガスや塵から放たれる一酸化炭素ガスの光を捉えており、その姿が赤色として鮮明に表されている。これまでのハッブル宇宙望遠鏡によって撮影された写真と比べて、詳細な姿が写し出されている。
将来的には更なるJWSTの撮影によって、NGC 2090の中にある星団の姿が捉えられ、星形成の現場が詳細に捉えられる予定である。その観測データを基に、天文学者たちの研究が進められ、星形成の理解が進むことが期待されるとしている。