12月14日

 

 

 

写真1 ( C ) ESA/Hubble & NASA, A. Riess, D. Thilker, D. De Martin (ESA/Hubble), M. Zamani (ESA/Hubble).

ハッブル宇宙望遠鏡が捉えた渦巻銀河・NGC 5643の姿。

 

 ESA(欧州宇宙機関)は9日、ハッブル宇宙望遠鏡によって撮影された壮大な渦巻銀河・NGC 5643の写真を公開した(写真1)。青い星、レース状で赤褐色の塵の雲、斑点状のピンク色で示された星形成領域で構成される2本の大きな渦巻腕が、はっきりと写る様子がわかる。

 

 NGC 5643はおおかみ座方向およそ4000万光年離れた場所にある。写真1は可視光線で捉えられた写真であり、NGC 5643の魅力的な様子が写るが、人間の目では見ることができない多くの特徴がNGC 5643にはある。紫外線やX線でその姿を捉えると、NGC 5643は活動銀河核であることがわかっている。一般的に活動銀河核とは、銀河中心に超巨大ブラックホールが存在し、多くのガスや塵を吸収することで強い光が放たれ、明るく輝く天体のことである。超巨大ブラックホールが周りからガスを吸収すると、円盤上にガスが集まり、数十万度まで温度が上がる。高温になるまで温められたガスは磁場に沿って明るく輝き、その様子はX線によって確かめることができる。

 

 NGC 5643は活動銀河核であり、X線で銀河中心の様子が捉えられていたが、NGC 5643に限って言うと銀河の中で最も大きなX線源は、実は銀河中心部ではない。最近の観測により、XMM-Newtonと呼ばれるX線観測装置でNGC 5643の様子を捉えたところ、銀河外縁でNGC 5643 X-1と呼ばれるX線源が初めて発見された。このことは中心にある超巨大ブラックホールよりも大きなX線源が銀河外縁にあることを意味しているが、その正体が太陽質量のおよそ30倍ほどの小さなブラックホールであることが判明した。このブラックホールが伴星と共に連星系を成しており、伴星からガスを吸収して円盤を形成し、明るく輝くことで、銀河中心よりも大きなX線源であることが確認された。