1月11日
写真1 ( C ) ESA/Hubble & NASA, D. Erb.
ハッブル宇宙望遠鏡がうみへび座方向の姿を捉えた画像。アインシュタインリングを含む様々な銀河や星が写る。
NASA/ESAは6日、ハッブル宇宙望遠鏡によって捉えられた、うみへび座方向にある重力レンズ効果によってできた「アインシュタインリング」を含むたくさんの銀河や星が写る画像を公開した(写真1)。
写真1を見ると様々な星や銀河の姿が写し出されており、どれも同じように地球から離れているように見えるが、実はそれぞれ地球からの距離が異なる。例えば回折スパイクを出している星は、天の川銀河内に存在しており、写真下にある銀河の縁にある明るい星は、地球からおよそ3,230光年離れた場所にあり、位置天文衛星Gaiaデータの解析によってその姿が明らかになった。写真下の青い星で構成される銀河は、LEDA 803211と名付けられており、6億2,200万光年離れた場所に位置する。この銀河中心は明るく輝いており、銀河円盤内にたくさんの星が写っている様子がわかる。またこの写真内には、構造が不明確なものの、たくさんの銀河が写し出されている。
そしてこの写真1で極めて目立っているのは、写真右上にある黄金の銀河が、リングで囲われている様子である。これは重力レンズ効果によってできた姿であり、遠くにある天体が観測者との間に強い重力源となるブラックホールや銀河、銀河団があると、遠くにある天体の光が曲げられたり、増光されることによってできる姿である。強い重力源となる天体は、レンズ天体と呼ばれる。重力レンズ効果はアインシュタインが一般相対性理論に基づいて予想した効果であり、実際に観測が行われたリング構造はアインシュタインリングと呼ばれている。写真1に写るアインシュタインリングは、宇宙が生まれてからたった25億年しか経っていない初期宇宙における銀河の様子である。重力レンズ天体となっている黄金の銀河は、もっと観測者に近いところに存在する。このようにリング状になった銀河と、重力レンズ天体としての銀河が一直線に並んでいることはとても珍しく、宇宙初期における銀河の成り立ちを調べる上で重要な観測結果であるとしている。