1月18日
画像1 ( C ) ESA/Gaia/DPAC, Stefan Payne-Wardenaar.
位置天文衛星・Gaiaのデータを用いてイメージ化された天の川銀河。Gaiaはこれまでの理論モデルを覆し、様々な知見をもたらした。
ESAは15日、2013年に打ち上げられた位置天文衛星・Gaiaのミッション終了を報告した。Gaiaのタンクに積まれた燃料はまだ残っているものの、正確な位置にとどまり続けるために多くの燃料が必要とされ、今後リタイア軌道に移され、3月25日に回収予定であるとしている。Gaiaは我々の住む天の川銀河やその近傍銀河の星の観測を続け、全体的な天の川銀河の構造をマップ化するのに大きく貢献した。
位置天文衛星・Gaiaは2013年の12月19日に打ち上げられ、これまでの10年以上に渡る期間において、天の川銀河及びその近傍銀河における星の位置(赤経、赤緯)、星までの距離、明るさ、視線速度、化学組成等の観測を行ってきた。宇宙における流星塵や太陽風に耐えて、20億以上の星や小惑星、天の川銀河背景にある銀河やクエーサーを含む3兆回以上の天体の観測を行った。Gaiaデータは5億8,000万回ものアクセス数があり、13,000もの参照されたことのある論文が発表された。
Gaiaがもたらしたデータは、天文学者たちに興味深いデータをもたらしてきた。Gaiaが発見するまでに理解が進んでいなかった物理的な特徴を得ることによって、天の川銀河の形成・進化過程を理解する上で重要な資料が得られた。例えば天の川銀河形成初期において衝突してきた古くからある星の流れが発見されたり、天の川銀河に衝突してきた他の銀河の存在可能性が見いだされたことである。また15万以上の小惑星が発見され、このうちの数百個の小惑星では衛星の存在が見いだされている。さらに宇宙が誕生してからわずか15億年という初期宇宙において起きた、130万個に及ぶクエーサーの3次元化にも成功している。また太陽質量のおよそ33倍ほどの質量を含むブラックホールの種も発見された。Gaiaプロジェクトの科学者であるJohannes Sahlmann氏は、「Gaiaの11年に渡るデータ収集は終了したが、次のデータリリースに向けて解析が行われる」とコメントしており、Gaiaデータの最新版が公開され、そのデータ解析によって、今後新たな発見がなされることが期待される。
Gaiaがもたらした最大の功績は、これまでの観測によってなされなかったほぼ完ぺきに近い天の川銀河のマップ造りである。画像1は、Gaiaデータを基に作成された天の川銀河の画像である。Gaiaデータの解析によって渦巻腕が2本以上あることがわかり、それまでの理論モデルよりもあまり輝いていないことが判明した。また中心にある棒構造が、太陽に向けて傾いていることも判明した。天の川銀河の可視化を担当したStefan Payne-Wardenaar氏は「Gaiaデータによってこれまでの理論モデルに大きな変革をもたらした。今後2回にわたって行われるデータ公表によって更なる知見がもたらされるであろう」とコメントしている。
Gaiaデータの収集は終わったが、そのデータ公表に向けての解析が現在進行中であり、Gaia Data Release 4(DR4)として2026年に公開予定である。DR4には連星系のデータも含まれており、明るい星のまわりを周回する隠れた伴星のデータも含まれている。また多くの太陽系外惑星のデータも含まれるとしている。その後2030年には最終版DR5が公開予定である。
画像2 ( C ) ESA/Gaia/DPAC, Milky Way impression by Stefan Payne-Wardenaar.
位置天文衛星・Gaiaのこれまでの功績。