2月1日

 

 

 

写真1 ( C ) X-ray: NASA/CXC/SAO/V. Olivares et al.; Optical/IR: DSS; H-alpha: CFHT/SITELLE; Image Processing: NASA/CXC/SAO/N. Wolk.

チャンドラX線望遠鏡とVLT望遠鏡によって撮影されたペルセウス座銀河団とケンタウルス座銀河団の姿。紫色はチャンドラX線望遠鏡によって撮影されたX線がある領域、ネオンピンク色は暖かいガスで構成されるフィラメントがある領域を示している。そして銀河団中央にある白いドットは、巨大ブラックホールを示している。

 

 NASAは1月27日、Valeria Olivares氏(サンティアゴ・デ・チレ大学)を中心とする研究チームが、チャンドラX線望遠鏡とVLT望遠鏡により、ペルセウス座銀河団とケンタウルス座銀河団を含む7つの銀河団をX線・可視光線で観測を行った結果、銀河団中央にある巨大ブラックホールが自身から放出するジェット形成に伴う増光現象によって、ジェットと衝突した高温ガスを冷まして温かいガスに変えて、細いフィラメントを作り出し、それが再び巨大ブラックホールに戻ってくるという、循環したプロセスがあることを発見したと発表した。この循環によって巨大ブラックホール自身が、自分の周りにある物質を用いて再びジェットを放出するサイクルを作り出すことが可能であるとしている。

 

 銀河団は、星やガス・塵を含む銀河がおよそ数百個ほど集まった天体であり、3000万~1億度という超高温ガスの雲がたくさん存在する。今回観測対象となった7つの銀河団はこれらの特徴に加えて、いずれも中央に巨大ブラックホールが存在し、その質量は太陽質量の100万倍~100億倍ほどである。巨大ブラックホールは、周りのガスや塵を集めることで、ブラックホール中心から双極方向に向けて、ガスで構成されるジェットを噴出している。

 

 研究チームは7つの銀河団をチャンドラX線望遠鏡とVLT望遠鏡により観測した結果、図1のような画像を得ることに成功した。紫色に輝く部分は、チャンドラX線望遠鏡が捉えた高温ガスで構成されるフィラメントから放出されたX線がある部分を示している。ネオンピンク色に輝く部分は、VLT望遠鏡が可視光線によって捉えた高温ガスよりも低い温度の温かいガスで構成されたフィラメントがある部分を示している。この画像からは、ブラックホールから放出されるジェットが高温ガスと衝突し、冷まされたガスと細くて温度の高いガスで構成されるフィラメントが作られることが判明したとしている。このフィラメントがブラックホールの中心部に流れていき、再びジェットの放出を起こすのに重要な役割を果たしているとしている。このようなプロセスをたどる上でガスの乱流が寄与していることも明らかにした。

 

 また今回発見された理論モデルでは、銀河団中心にある高温のガスからなるフィラメントと温かいガスの間に重要な関係があることを示した。それは当たり前のようにも思えるが、高温のガスが明るく輝いている場所では、温かいガスも明るく輝くということである。このような関係は今回初めて発見され、理論モデルを支持する上で重要であるとしている。さらにフィラメント構造がブラックホールに再びジェットを放出するのに必要な物質を供給するだけでなく、新しい星の材料となることを示した。フィラメント構造にはブラックホールのジェットによってできた空洞が存在し、チャンドラX線望遠鏡がその構造を捉えることで、このような発見に至った。

 

 今回発見されたフィラメント構造はクラゲ銀河の構造にも似ている。クラゲ銀河は周りにある銀河間ガス中を通過することで、クラゲ銀河中のガスがはぎとられ、ひだひだの構造ができあがる。このような似た構造が巨大銀河団のフィラメント構造とクラゲ銀河の2つの関係を明らかにする可能性があり、他の似たような天体にも共通したプロセスが適用されることが期待されるとしている。