2月22日

 

 

 

写真1 ( C ) ESO/VVVX survey.

VISTA望遠鏡に搭載された赤外線観測装置・VIRCAMによって捉えられた、ほ座方向約5,500光年先にある若い星団・RCW 38の姿。様々な色合いで光り輝いている姿が印象的である。画素数は、8,000万画素という高解像度の写真である。

 

 

写真2 ( C ) ESO/Digitized Sky Survey 2. Acknowledgment: Davide De Martin.

可視光観測で捉えられたRCW 38の姿。塵で覆われており、中身が良く見えない。

 

 ESO(ヨーロッパ南天天文台)は13日、VISTA望遠鏡(チリ・パラナル天文台)の赤外線観測装置・VIRCAMによって捉えられた若い星団・RCW 38の写真を公開した(写真1)。星団中に、しま模様や渦模様が見えるが、この場所で多くの星が生まれており、様々な色で光り輝いているため、幻想的な写真となっている。ピンク色の部分は星団を取り囲むガスがある場所を示している。

 

 RCW 38は、ほ座方向約5,500光年の場所に位置する星団である。星団は圧力鍋のようになっており、塵の塊や密度の高いガスが自己重力によって集まりつぶれることで、星が形成される。RCW 38の中には、46億歳になる太陽に比べて若い星が2,000個ほど存在し、それらの年齢は100万年未満であると考えられている。RCW 38内で星の形成などの動きが活発であり、天文学者たちにとって格好の研究対象となっている。

 

 写真1はVISTA望遠鏡の赤外線観測装置・VIRCAMによって撮影されたRCW 38の姿であり、写真2の可視光線観測に比べて多くの星や、ガスの姿が写し出されている。ピンク色に輝く場所は、新しく生まれた星から出る放射線が、星団を取り囲むガスを照らしている部分を示している。また塵のまゆにつつまれた若い星や、褐色矮星(質量が小さいために中心部で水素の核融合が起こらない星であり、温度が低い)の姿も写し出されている。写真2は可視光線観測で捉えられたRCW 38の姿であり、新しく生まれた星から出る放射線が、塵の塊によってさえぎられるため、中身が良く見えない。写真1と写真2を見比べると、VIRCAMが写し出した写真1がいかに詳細な姿を示したかがよくわかる。

 

 今回公開された赤外線観測による写真は、VISTA望遠鏡に搭載されたVIRCAMと呼ばれる赤外線観測装置によって得られたデータを解析したものであるが、RCW 38のデータ取得後、VIRCAMはその役割を終えた。今後はVISTA望遠鏡に4MOSTと呼ばれる新たな分光観測装置が設置される予定である。4MOSTは広いエリアにある2,400もの天体の分光観測を行うことができる。今後この4MOSTが、目に見えない新たな天体の姿を写し出していくことが期待されるとしている。