3月8日
写真1 ( C ) NASA, ESA, CSA, STScI.
JWSTの近赤外線観測装置・NIRCamによって撮影された原始星・Lynds 483の姿。
NASA/ESA/CSAは7日、ジェームズ・ウエッブ宇宙望遠鏡(以下JWST)の近赤外線観測装置・NIRCamによって撮影された原始星・Lynds 483の姿を公開した(写真1)。Lynds 483は2つの原始星で構成されており、そこからガスや塵を含むジェットが放出されており、オレンジ色や青色、紫色で光り輝いており、美しい姿をしている様子がわかる。
原始星・Lynds 483は2つの原始星で構成されており、1960年代前半にアメリカの天文学者・Beverly T. Lyndsによって名付けられた。Lynds 483は数万年という長い年月をかけて、ガスや塵で構成されるジェットを定期的に放出してきた。新しいジェットが古いジェットに衝突すると、その衝突面において、ジェット中の物質がしわくちゃになったり、くるくる回ったりすることが起こり得る。また長い年月をかけてジェットやそのまわりのガス雲の中で化学反応が起き、一酸化炭素やメタノール、その他いくつかの化合物を生産してきたと考えられている。またLynds 483は今後数百万年という時を経て、太陽と同じような星になり、ジェットが周りの半透明状の物質を全て掃きだして、残った物質が惑星で見られるようなガスと塵からなる円盤を作り出す可能性がある。
今回JWSTによって捉えられたLynds 483の写真1を見ると、中心部では2つの星が存在するように、砂時計のような形をしている。またこの原始星から出る光が、周りのガスや塵を照らし出し、オレンジ色の円錐形ができていることがわかる。このオレンジ色の円錐形のV字形から90度ずれたところに暗い領域が広がっており、何も物質が存在しないように見えるが、実際には塵が密集している。しかしJWSTのNIRCamでこの暗い領域を調べると、この領域に存在する、もしくは遠くにある星からの光が塵の覆いを突き抜けるように、白や青色で光り輝く姿を捉えることができたとしている。
また写真1を見ると原始星から双極方向にジェットが放出されている様子がわかり、途中でくるくる回る状態になったり、曲げられているところが見受けられる。例えば写真右上のオレンジ色の弧状になった部分があるが、これはショックフロントと呼ばれる。ショックフロントは、ジェットが密度の高い物質がある領域に突入した際に、ジェットの動きが遅くなる部分を示している。そしてオレンジ色の弧から少し下を見ると、ピンク色の領域が存在し、物質がもつれて乱雑に広がっている様子がわかる。この領域は今回JWSTによる観測で初めて発見され、なぜこのような姿をしているのかを理解するためには、これから詳細な研究が必要であるとしている。またさらにその下をみると紫色の柱のようなものが存在するが、この柱は中心星からほぼまっすぐに伸びており、内部の密度が高いために曲げられてこなかったと考えられる。
Lynds 483から放出されるジェットは対称にも非対称にもみえる箇所が存在するが、研究者たちが理論モデルを再構築することで、なぜこのような形になったのかを理解することにつながるとしている。また原始星から出る物質の量がどれだけ存在し、どのような物質が作られるかや、様々な領域の密度を計算することが今後の研究課題であるとしている。