3月22日

 

 

 

写真1 ( C ) ALMA (ESO/NAOJ/NRAO)/S. Carniani et al./S. Schouws et al/JWST: NASA, ESA, CSA, STScI, Brant Robertson (UC Santa Cruz), Ben Johnson (CfA), Sandro Tacchella (Cambridge), Phill Cargile (CfA).

背景写真はJWSTによって撮影された写真であり、真ん中に今回観測対象となった銀河・JADES-GS-Z14-0の姿が点として写る。この銀河を拡大した写真が右に表示されており、この画像はアルマ望遠鏡によって捉えられた。今回の観測でこの銀河において酸素が発見され、酸素が存在する銀河の再遠方記録を更新した。

 

 Sander Schouws氏(オランダ・ライデン大学の博士候補生)及び Stefano Carniani氏(イタリア・ピサ高等師範学校)を中心とする2つの研究チームは20日、アルマ望遠鏡を用いた観測により、酸素が検出された再遠方銀河の記録を更新したと発表した。その銀河はジェームズ・ウエッブ宇宙望遠鏡(以下JWST)によって昨年発見された、宇宙誕生間もない時期に形成されたJADES-GS-z14-0であり、ろ座方向およそ134億光年離れた場所にある(写真1)。つまりこの銀河は宇宙誕生から3億年しか経っておらず、宇宙年齢の2%ほどである。このことは宇宙初期における銀河が早い時期に形成され、従来予測されていたよりも化学物質に富んでいたことを示唆する。

 

 銀河形成の初期段階では、銀河は水素やヘリウムからなる若い星で構成され、その後星が重力収縮による進化を続けることによって、酸素などの重元素を作り出すと考えられている。そしてこられの星が死を迎えると、銀河中にこれらの重元素が放出される。

今回観測対象となったJADES-GS-z14-0はJWSTによって昨年発見された銀河であり、ろ座方向およそ134億光年離れた場所にあり、宇宙が誕生してから3億年という年齢に満たないほど若い。このような銀河では重元素が作られるほどの時間がないため、重元素の量は少ないと考えられていた。

 

 今回研究チームがアルマ望遠鏡による観測により、JADES-GS-z14-0を観測した結果、酸素を発見することに成功したと発表した。酸素の量は従来考えられていたモデルよりも10倍ほどの量があることが判明した。Stefano Carniani氏は、「宇宙初期における銀河が化学物質に富んでいたという、今回の観測成果に大変驚いている。このことは銀河がいつどのようにして形成されたかについて、新たな疑問を提唱した。」とコメントしている。

 

 また今回の酸素の発見によって、JADES-GS-Z14-0までの正確な距離を測ることができるようになった。アルマ望遠鏡の性能は高性能であり、1kmの距離に対して誤差は最大5cmほどしかない。

 

 Rychard Bouwens氏(ライデン大学・准教授)は、「今回の観測成果は、JWSTによって発見された銀河をアルマ望遠鏡によって追観測することによってその存在を確かめ、さらに酸素を発見することや正確な距離を測ることに成功したという意味で有意義な研究となった」とコメントしている。またESOの天文学者であるGergö Popping氏は「今回の観測成果は、ビッグバン発生後に銀河が素早く形成されたことを示唆しており、アルマ望遠鏡による観測が引き続き、宇宙初期における銀河形成の謎を解き明かす上で重要な役割を果たすと考えられる」と今後の期待についてコメントしている。