4月5日

 

 

 

写真1 ( C ) ESA/Hubble & NASA, A. Nota, P. Massey, E. Sabbi, C. Murray, M. Zamani (ESA/Hubble).

ハッブル宇宙望遠鏡が捉えた、小マゼラン雲内にある星団・ NGC 346の姿。写真真ん中に太陽質量の何倍もの質量を持つ若い多くの星が写し出されている。その星団左側には、星団から放出される放射線や星風によって吹き飛ばされた星雲が圧縮されてできた大きな弧の姿が写る。その弧の後ろ側にはたくさんのオレンジ色の星が写っている。

 

 ESAは4日、間もなくハッブル宇宙望遠鏡打ち上げ35周年を迎えるにあたり、ハッブル宇宙望遠鏡(以下HST)の新しいデータや技術を用いて得られた、小マゼラン雲内にある星団・NGC 346の写真を公開した(写真1)。写真1の中にあるたくさんの青い星は、太陽質量の何倍もの質量を持っており、生まれたばかりの星である。またピンク色に輝く星雲やへびのような暗い雲は、星が誕生した後の残骸である。

 

 NGC 346は、きょしちょう座方向約20万光年離れた場所にある天の川銀河の伴銀河である小マゼラン雲内にある。小マゼラン雲はヘリウムよりも重い金属の量が少なく、宇宙初期と同じ環境にある銀河として知られる。NGC 346にはおよそ2500以上の新しい星が存在していると考えられており、写真1の中にある青く輝く星は、星団内にある最も重い星であり、太陽質量の何倍もの質量があると考えられている。

 

 HSTによってNGC 346はこれまでにも撮影が行われているが、今回の画像を作成するにあたり、HSTによって得られた最新のデータや、最新の技術が搭載された高精度・高解像度の装置が用いられている。これらの装置によって可視光だけでなく、赤外線や紫外線の光も捉えてNGC 346において星形成が活発に行われている様子を捉えることが可能になった。

 

 写真1は、HSTによって11年もの間観測された星団・NGC 346の姿を表したものである。NGC 346内の星の動きを捉えることで、これらの星が星団の中心に向かって渦を巻きながら移動していることが判明した。これらの渦の動きは、星団中心部の星形成の材料ともなる星団外側にあるガスの流れが関与していると考えられている。またNGC 346は星の彫刻家としても知られ、星団から発せられる強い放射線、星風がまわりにある星雲を吹き飛ばして、星雲内に大きな洞穴を作り出している様子が写真1からわかる。このNGC 346が存在している星雲はN66という名前が付けられ、H Ⅱ領域と呼ばれる星形成領域内にある。H Ⅱ領域がNGC 346内にある若い星から発せられる紫外線によって明るく輝いており、H Ⅱ領域が明るく輝いているということが、NGC 346がまだ若い星団であるということを示している。