4月12日
写真1 ( C ) ESA/Hubble, NASA, L. Lamy, L. Sromovsky.
ハッブル宇宙望遠鏡の可視光線・紫外線観測によって撮影された天王星と大気中のオーロラの姿。左から順番に2022年の10月8日、10日、24日に撮影された。天王星自体は濃い青色の領域と白い領域からなっており、周りにかすかにリングが写っている。水色に明るく輝く部分がオーロラを示している。
Laurent Lamy氏(エクス-マルセイユ大学)を中心とする研究グループは7日、ハッブル宇宙望遠鏡(以下HST)を用いた可視光線・紫外線観測により、天王星のオーロラの動きを観測することで正確な自転周期を見積もり、その周期が17時間14分52秒であると発表した。1986年に人工衛星・ボイジャー2号のフライバイの際に計測された自転周期よりも、およそ28秒長い周期であるとしている。観測精度はこれまでの観測モデルよりも1,000倍ほど高い。今回の観測成果は、今後天王星における多くの謎を解き明かす上で重要になるとしている。
惑星の自転周期を求めることはとても困難なことであり、特に天王星のように地球から遠く離れた場所にあり、直接観測することが難しい惑星の自転周期を正確に求めることは不可能であるとされていた。
今回研究チームは、直接観測することが難しい天王星の自転周期を求めるために、HSTで大気の状態を観測できることに着目し、天王星のオーロラの動きを観測することとした。これまでのHSTの観測システムでは、オーロラが発生する極磁場を正確に捉えることが困難であったが、現在のシステムでは40年ほど続けて極磁場の位置と領域を捉えることが可能となっており、オーロラを正確に観測することが可能である。オーロラは太陽風から放出されるエネルギーの高い粒子が、惑星の回転軸の極から伸びる磁場に捉えられて移動する際に、大気中の酸素や窒素に衝突することによって発光する現象のことをいう。天王星のオーロラは、地球や木星、土星のオーロラと異なり、独特で予測不能な動きをする。それは天王星では、回転軸から離れたところに磁場が存在するためである。
実際に研究チームがHSTによる天王星の観測を行った結果、写真1のような画像を得ることに成功した。そしてHSTのデータ解析を行った結果、天王星の自転周期が17時間14分52秒であると見積もった。Lamy氏は「HSTによる継続的な観測が不可欠であり、このデータがなければ天王星の正確な自転周期を求めることができない」とコメントしている。また天王星のオーロラを正確に観測することができたことで、天王星の磁場の領域を正確に把握することにつながり、将来の天王星の観測プログラムに役立つとしている。
今回のHSTによる観測成果によって、太陽系の中で謎の多い天王星の理解が深まることが期待されるとしている。またHSTが何十年も天王星を捉え続けることができるようになったことで、今後天王星に関する多くの情報がもたらされることも期待されるとしている。