1月10日

写真1 ( C ) NASA, ESA. G. Anand (STScI), and A. Benitez-Llambay (Univ. of Milan-Bicocca); Image processing: J. DePasquale (STScI).
ハッブル宇宙望遠鏡の観測対象となった、ガスを含まないダークマター雲・Cloud-9の姿。Cloud-9は、渦巻銀河・M94の近くにある。紫色の領域はVLA望遠鏡によって観測されたガスがある領域を示しており、白いダッシュ線で囲まれた領域を今回ハッブル宇宙望遠鏡が観測したところ、この領域に星が含まれないことが判明した。ハッブル宇宙望遠鏡が観測するまでは、この天体は光をわずかしか出さない矮小銀河であると考えられていた。
Alejandro Benitez-Llambay氏(イタリア・Milano-Bicocca大学)を中心とする研究グループは5日、ハッブル宇宙望遠鏡(以下HST)を用いた観測により、以前発見されたガスが豊富なダークマター雲・Cloud-9に、星が含まれていないことを確認したと発表した(写真1)。星が含まれていないダークマター雲が今回初めて発見されたこととなる。Cloud-9は、銀河形成や初期宇宙、ダークマターの性質を理解する上で貴重な天体になるとしている。
ダークマター雲・Cloud-9は、中性水素で構成されており、Reionization-Limited HⅠ Cloudの頭文字を取って、”RELHIC”とも呼ばれている。Cloud-9は初期宇宙にある天体であり、初期宇宙における星を含まないガス雲の化石ともいえる。またダークマターが存在するものの、星を形成するほどの十分なガスを蓄積できなかったために、星を形成できず、もちろん銀河になりきれなかったと考えられている。
Cloud-9は3年前に中国のFASTと呼ばれる望遠鏡によって初めて発見された。Cloud-9という名前の由来は、渦巻銀河・Messier 94の近くで発見された9番目のガス雲ということからきている。初めて発見されて以降、アメリカのGreen Bank天体望遠鏡、VLA望遠鏡による追観測が行われてきたが、このダークマター雲が、本当に星を含まないかどうかはわかっていなかった。
今回Alejandro氏を中心とする研究チームが、Cloud-9の追観測をHSTによって行った結果、このダークマター雲が星を含んでいないことが確認された。Alejandro氏は、今回の発見について「これは銀河になり得なかった天体の物語である。我々は科学を学ぶ上で成功よりも失敗例から多くのことを学んできた。今回の発見はまさに、なぜ星を含まないガスやダークマターを含む天体が、銀河になりきれなかったかを理解することにつながる」とコメントしている。
今回のHSTの観測データから、このダークマター雲の中心核が中性水素で構成されており、その雲の直径が4,900光年あることが判明した。さらに、この雲に含まれる水素ガスの質量が、太陽質量の100万倍であることも判明した。もしこの雲のガス圧と重力が釣り合っているならば、太陽質量の50億倍のダークマターが分布することになるとしている。このようなダークマター雲は、通常ラム圧によってガスが剥ぎ取られ、その存在がなくなると考えられるため、Cloud-9は、このような環境下にも耐えてきたことを示している。さらに近傍銀河であるMessier 94と重力相互作用をしており、わずかなガスの乱れがあることも判明した。この雲は方法論は不明ながらも、将来的にガスの収縮によって多くの星が形成され、銀河になると予測されている。
星を含まないダークマター雲の発見によって、将来的に多くの銀河になり得なかった天体が今後どんどん発見されていくことが期待されている。そしてこれらの観測データをもとに、初期宇宙やダークマターの物理的性質について理解が深まることが期待されるとしている。