1月17日

写真1 ( C ) NASA, ESA, F. Ferraro (University of Bologna).
ハッブル宇宙望遠鏡が捉えた球状星団・NGC 6388の姿。
NASA/ESAは2012年12月19日、ハッブル宇宙望遠鏡(以下HST)によって撮影された球状星団・NGC 6388の写真を公開した(写真1)。真ん中付近が青白く輝いており、そのまわりにオレンジ色や青色の星が多く散りばめられている様子がわかる。全体的に宝石が散りばめられたような、見事な一枚の写真である。
NGC 6388は天の川銀河にある球状星団の一つであり、いて座方向約35,000光年離れた場所に位置する。球状星団は数十万~数百万個の星が自己重力によって集まった星の集団であり、天の川銀河では150個ほど見つかっている。これらの球状星団の年齢は120~130億年であり、宇宙の始まりであるビッグバンが起きたのは137億年前であるため、初期宇宙でできた天体ということになる。
球状星団とその球状星団に含まれる星は、同じ時期にできたと考えられており、たとえ大きな質量を持っていた星でも、明るさを保つ燃料を使うことによって、だんだん質量が小さくなっていくはずである。
しかし今回ある研究チームが観測データの解析を行ったところ、この常識を覆す発見が得られた。NGC 6388を含めた天の川銀河内の21もの球状星団のHSTによる観測データを、Francesco Ferraro氏(ボローニャ大学)を中心とする研究チームがデータ解析を行ったところ、いくつかの球状星団が若々しさを保っていることが判明したとしている。ここでいう若々しさとは、人間に例えると、90歳にも関わらず元気に動いているおじいちゃん・おばあちゃんであると考えてほしい。この若々しさを保つ要因として、「青色はぐれ星」の存在が大きく影響すると指摘しており、この青色はぐれ星は太陽質量よりも重い質量を持つ。
青色はぐれ星は、球状星団などの年齢の高い恒星の系に現れる異常に高温(青色)の恒星のことであり、2つ以上の星の衝突合体、もしくは連星系において伴星から質量を得ることによって太陽質量よりも質量が大きくなった星のことをいう。この青色はぐれ星は、mass segregation(質量による住み分け)という現象によって、質量の小さな赤い星と重力相互作用を及ぼし合い、質量の大きな青色はぐれ星がエネルギーを失って星団中心に向かっていき、赤い星はエネルギーを得て球状星団外部にいく。
また、研究チームは青色はぐれ星の分布の仕方が球状星団によって異なることを発見し、大きく3つのグループに分類できるとしている。1つ目のグループは、青色はぐれ星が球状星団内にまんべんなく全体的に広がっており、若く見えるものである。2つ目のグループは、青色はぐれ星が中心付近に存在しており、年老いたような姿に見える。3つ目のグループは、中心付近にある青色はぐれ星がさらに中心に向かいつつあり、だんだん年老いていく様子を示している球状星団である。多くの球状星団が2つ目のグループに属しており、写真1で示したNGC 6388も2つ目のグループに属する。研究チームの一人である、Barbara Lanzoni氏(イタリア・ボローニャ大学)は、「このことは年の取り方が、球状星団ごとに異なっていることを意味しており、進化のスピードが球状星団によって異なることを示している」とコメントしている。
球状星団における中心付近の星が、中心に集まると重力崩壊を起こし、密度の高いひとかたまりの天体ができると考えられている。このように重力崩壊に向かうプロセスや、球状星団中心付近の密度、青色はぐれ星が動く速度はある程度のことがわかっている。しかしながら、密度などがどの程度になると、重力崩壊が起きるのかはわかっていない。このプロセスを理解することが、球状星団の年の取り方の違いを理解する重要な一歩になるとしている。