2月7日
写真1 ( C ) ESO/K. Iłkiewicz and S. Scaringi et al. Background: PanSTARRS.
ESOのVLT望遠鏡に搭載された多波長観測器・MUSEによって捉えられた、死んだ星・RXJ0528+2838とその周りの弧状衝撃波の姿。四角いボックスで囲んだ部分に様々な色で示された弧状衝撃波が写っており、赤色の光は水素、緑色の光は窒素、青色の光は酸素があることを示している。
Simone Scaringi氏(イギリス・ダラム大学)を中心とする研究チームは1月12日、ESOのVLT望遠鏡に搭載された多波長観測器・MUSEを用いて、死んだ星・RXJ0528+2838周りの弧状衝撃波を観測することに成功したと発表した(写真1)。死んだ星周りで衝撃波は発生しないと考えられていたことから、どのようにして周りの環境と相互作用して衝撃波を発生するか、再考が迫られるとしている。
死んだ星・RXJ0528+2838は、太陽と同じように銀河中心周りを周回する星であり、地球から約730光年離れた場所にある。質量の小さな星が超新星を起こした結果できた白色矮星であり、太陽に似た伴星と連星系を成している。このような連星系では、一般的に質量降着によって白色矮星周りに円盤を形成し、中心に向かって進む物質移動によってジェットが放出される。しかしRXJ0528+2838が成す連星系ではそのような形をしていない。
一般的に星から出るジェットが、宇宙空間にある星間ガスと相互作用することで、弧状衝撃波が発生する(弧状衝撃波は、船が水上を進む際に船頭に広がる波の形をした衝撃波のことである。衝撃波はジェットが星間ガス中を進む際にできる波のことである)。そのため円盤を形成しないRXJ0528+2838では、弧状衝撃波が見られないと考えられていた。
研究チームは、スペインのニュートン望遠鏡で観測された死んだ星・RXJ0528+2838周りの奇妙な形をした星雲に注目していた。そこでESOのVLT望遠鏡を用いて観測を行ったところ、弧状衝撃波を観測することに成功した(写真1)。このことは円盤を形成しない星からは弧状衝撃波が形成されないという理論を覆すとともに、連星系形成の過程を理解する上でも重要な観測結果であるとしている。さらに研究チームは、弧状衝撃波の形と大きさから、この星が少なくとも1,000年以上ジェットを放出し続けていることが示唆されるとしている。
ここで問題となるのは円盤を形成しない星からどのようにしてジェットが放出されるのかということである。RXJ0528+2838ではMUSEのデータから強い磁場が存在することで知られており、磁場に沿って直接伴星から質量が流れており、それがジェットを放出させていると研究チームは推測している。しかし観測された磁場の強さでは、弧状衝撃波が数百年程度しか続かないであろうと推測しており、弧状衝撃波を発生させるエネルギー源としては不十分である。
研究チームは、今後建設予定のESOのELT宇宙望遠鏡によって、円盤を持たない星から出るジェットの謎を解き明かすことを目標としている。