7月4日

 

 

画像1 ( C ) NASA, ESA, CSA, R. Crawford (STScI).

今回観測された太陽系外惑星・WD 1856 b(左下)と主星である白色矮星・WD 1856+534(右上)のイメージ図。

 

 Ryan MacDonald氏(セント・アンドリューズ大学/イギリス)を中心とする研究チームは1日、ジェームズ・ウエッブ宇宙望遠鏡(以下JWST)の近赤外線観測装置・NIRCamを用いた観測により、太陽系外惑星・WD 1856 bが主星を通過した際の減光度合いを確認する方法(トランジット法)によって、この太陽系外惑星の質量、表面温度、大気の状態、化学組成を確認することに成功したと発表した。また主星が白色矮星であるが、この効果を考慮に入れた太陽系外惑星の表面温度が、理論モデルよりも明らかに高い(126℃)ことが判明した。太陽系外惑星・WD 1856 bが木星と同じくらいの大きさを持ち、主星が死を迎えた星であることから、今回の研究によって、我々が住む太陽系において太陽が数十億年後に死を迎えるにあたり、木星のようなガス型惑星が、数十億年後にどのような結末を迎えるかを予測することが可能になるとしている。

 

 太陽系外惑星・WD 1856 bは、2020年にNASAの人工衛星・TESSとスピッツァー宇宙望遠鏡によって発見された。地球から約80光年離れた場所にある太陽と同じくらいの質量を持つ白色矮星・WD 1856+534まわりにある惑星であり、木星と同じくらいの大きさを持つ。この主星・WD 1856+534は、数十億年前に死にゆく際に大きく膨れ上がり、赤色巨星となり、近くの惑星を飲み込んだり壊してきたりしたと考えられている。やがて外層が剥がれると、中心にある白色矮星が現れた。この主星周りを公転する太陽系外惑星・WD 1856 bの公転周期は約34時間であり、主星からの距離は300万km未満であることがわかっていた。これは地球・太陽間距離の約1/50であり、非常に近い距離にあることとなる。主星に近いにも関わらず、太陽系外惑星・WD 1856 bがどのようにして主星による破壊を免れ、現在の位置にたどり着いたのかが疑問として残ることとなった。

 

 今回研究チームは、JWSTの近赤外線観測装置・NIRCamの観測によって、太陽系外惑星・WD 1856 bに関する新たな情報をもたらした。この観測によると、その質量は木星質量の約4倍から11倍の間にあるとしている。また近赤外線データ(画像2参照)から、この惑星の表面温度が約126℃であることが判明した。この温度は単純に白色矮星からの光を浴びることによる効果を超えるほどの温かさであるとしている。この謎はどのようにして主星から近い距離の軌道に移動したかに関係がある。共同研究者であるO’Connor氏は「この疑問に答えるにあたって、2つの理論が考えられる。1つ目は、惑星が死にゆく主星によって飲み込まれる際に、生き残るようにして内部の熱が上がっていったという理論である。2つ目は、主星が3重連星であるがために、その主星以外の星の重力効果によって、主星に近い距離まで進んでいったという理論である。」とコメントしている。

 

 今日に至るまでどのようにして太陽系外惑星・WD 1856 bが内部熱を上げてきたかを検証することができていなかった。惑星が温められるようになった早い段階で、内部熱が高まっていたと推測される。そのため研究チームが今回のJWSTの観測データを惑星系の理論モデルに入力し解析したところ、主星が白色矮星になった30~55億年後に内部熱が高まったと結論づけた。この結果から、主星が赤色矮星である段階では主星から距離の遠いところを公転しており、徐々に主星近くまで来たと考えられるとしている。そして白色矮星の強い重力効果によって、内部熱が高まることとなった。

 

 また今回の観測によって、太陽系外惑星・WD 1856 bの化学組成も捉えることに成功した。小さな雲粒子や炭化水素、メタンが発見され、死にゆく星周りの惑星でこのような物質が発見されたのは今回が初めてである。

 

 今後太陽系にある太陽は、約50億年後に燃料である水素を使い切り、大きく膨れ上がって現在の100倍ほどの大きさの赤色巨星になると考えられている。やがて外層がはがれ生涯を終え、白色矮星になる。太陽が赤色巨星になった段階で、地球を含む惑星は破壊される可能性がある。しかしながら木星のようなガス型惑星の将来は不透明である。今回のような太陽系外惑星の未来を予測することによって、太陽系がどのような姿になっていくかを予測することができるようになることが期待されるとしている。MacDonald氏は、「最先端の宇宙望遠鏡を用いて太陽系外惑星の形成過程を知ることで、太陽系の将来を見通していきたい」と今後の抱負についてコメントしている。

 

 

画像2 ( C ) NASA, ESA, CSA, J. Olmsted (STScI).

JWSTの近赤外線観測装置・NIRCamによって捉えられた太陽系外惑星・WD 1856 bから放出された光のスペクトルグラフ。縦軸が主星からの光が惑星によってブロックされた量、横軸が光の波長を示す。赤色の領域がメタンによってブロックされた光の量を示しており、この惑星にメタンが存在することが判明した。