7月18日

 

 

写真1 (C) ESA/Hubble & NASA, M. Häberle (MPIA).

ハッブル宇宙望遠鏡が捉えた球状星団・オメガ星団の姿。砂粒のように青色、オレンジ色、黄色の星が広がっている。星団中心付近を拡大した様子が右上に写し出されており、赤く囲われた星が、今回発見された恒星質量ブラックホールと連星系を組んでいる。

 

 Matthew Whitaker氏(ユタ大学/アメリカ)を中心とする研究チームは13日、ハッブル宇宙望遠鏡(以下HST)によって撮影された球状星団・オメガ星団の観測データおよび、ジェームズ・ウエッブ宇宙望遠鏡(以下JWST)の観測データを解析した結果、恒星質量ブラックホールを発見することに成功したと発表した。写真1において、赤い丸で囲われた星と連星系を組んでおり、この明るい星の動きを捉えることで、今回のブラックホール発見に至った。今回の発見によって、球状星団・オメガ星団のような低金属量環境下におけるブラックホールの形成モデルが確立されることが期待されるとしている。

 

 オメガ星団は、ケンタウルス座方向約17,000光年離れた場所に位置する。天の川銀河の中で最も大きい球状星団であり、約1,000万個もの星が集まっている。地球から見ると暗く見えるものの、月と同じくらいの大きさで目で見ることができる。かつてHSTの観測データから、この星団の中心において中間質量ブラックホールは発見されたが、それと同時に10,000個もの恒星質量ブラックホールが存在するという理論が提唱された。中間質量ブラックホールは太陽質量の1000ないし1万倍、恒星質量ブラックホールは太陽質量の10倍程度以下の質量を持つブラックホールのことをいう。これまでに恒星質量ブラックホール候補天体周りにおける星の動径速度を測ったり、その候補天体に落ち込む物質から放たれるラジオ線やX線を測ることで、恒星質量ブラックホールの発見につなげようとしたが、今日まで発見には至らなかった。

 

 今回研究チームは、オメガ星団中のブラックホール候補天体周りの星の小さな動きを捉えることで、ブラックホール候補天体がブラックホールであるかの確認を取ることとした。このブラックホール候補天体は、oMEGACat BH-2という名前がつけられ、別の研究チームが中性子星の連星系であると推測していた天体である。研究チームはHSTの20年にわたる観測データおよびJWSTの近赤外線観測装置・NIRCamが捉えた詳細なデータを解析した結果、このブラックホール候補天体が恒星質量ブラックホールであることを確認することに成功した。このブラックホールの質量は、太陽質量の4.46倍の質量を持つとしており、質量が重すぎるがために中性子星になれなかったと結論づけた。質量が重いといえども、球状星団のような低金属量環境下においては、理論モデルよりも質量の小さな恒星質量ブラックホールであるとしている。このブラックホールは、目に見える星と連星系を組んでおり、その公転周期が今までに発見されたブラックホール連星系の中で最も長いものであり、その周期は94年であるとしている。このような長い公転周期である連星系を成していることは、オメガ星団における重力の過酷な環境を物語っており、連星系を成す天体同士が最初一緒にいたわけではなく、徐々にお互いを探していったと考えられている。またこの連星系の年齢は約120億年であるとしている。

 

 共同研究者であるAnil Seth氏(ユタ大学/アメリカ)は「今回の発見は、球状星団におけるブラックホール形成過程を理解する上で重要な資料である。また球状星団のような低金属量環境下において、重力波が発生するかどうかを理解することにつながる。」とコメントしている。