8月14日

 

 

写真1 (C)ESA/Webb, NASA & CSA, F. Peißker, J. Lu, F. Yusef-Zadeh, N. B. Sabha, C. Chan.
JWSTのMIRIとNIRCamによって撮影された、いて座Aスターとその付近にあるIRS 3を含む星形成領域の姿。赤やオレンジ、ピンクや白、青色の多くの星が写真いっぱいに敷き詰められている。中心部には白色の星が多い。この写真中心にいて座Aスターが存在し、その近くにIRS 3が存在する。写真所々に黒い部分があるが、多くの塵が存在するために光を隠している場所を示している。

 

 Florian Peißker氏(ケルン大学)を中心とする国際研究チームは11日、ジェームズ・ウエッブ宇宙望遠鏡(以下JWST)の中間赤外線観測装置・MIRIおよび近赤外線観測装置・NIRCamを用いた観測により、天の川銀河中心の超巨大ブラックホール・いて座Aスターまわりにある進化した星・IRS 3を観測した結果、酸素が豊富な塵および水が存在することを捉えることに成功したと発表した。いて座Aスターから放たれる強力な放射線があるにもかかわらず、豊富な物質が存在することを証明した。

 

 IRS 3は、いて座Aスターから0.55光年離れた場所に位置する。また漸近巨星分枝と呼ばれる星の進化の最終段階近くにある。通常の場合、この段階の星は、ヘリウム層の外側で水素の殻燃焼が生じ、星は膨張する。また温度が低くなり光度が増すとともに、恒星風を吹き出して化学物質やガスを宇宙空間に供給する。そしてこれらの物質が、宇宙の塵の源となる。ところがIRS 3の場合は超巨大ブラックホール近くにあるため、このような課程を経るかどうかは不透明であった。

 

 研究チームは2025年にMICONICプログラムの一環として、JWSTのMIRIとNIRCamによってIRS 3の観測を行った。そのデータを解析した結果、ここにある星に酸素が豊富な塵であるケイ酸塩ダストを検出するとともに、星の外周部において水を検出することに成功した。これらの物質は、将来形成される星や惑星を形成する上で重要な材料となるとしている。またこれまでの研究ではIRS 3に炭素が豊富に含まれると考えられていたが、この描像とは異なる結果を示すこととなった。またJWSTの観測データと数値シミュレーションを組み合わせて解析を行った結果、塵で構成される星の外層部が星から約1万天文単位まで広がり、星の中心部の温度が約1,200K、外側の温度が約100Kであることが判明したとしている。また太陽質量の約6倍の質量を持ち、年齢が7,200万年であることがわかった。また概観として、この星は宇宙空間に多くの物質を供給し、多くの質量を失っているように見えるとしている。