1月2日
ESA(欧州宇宙機関)は12月20日、マーズ・エクスプレス(火星探査機)によって捉えられた、コロリョフクレーターと呼ばれる火星のクレーターの写真を公開した。このクレーターは水でできた氷で覆われており、氷の上の何層にも覆われた冷たい空気が、氷の状態を維持しているとしている。
コロリョフクレーターの写真は、マーズエクスプレスの5つの軌道から得られた高解像度カメラ(HRSC)のデータを合成して作成された。2018年4月4日に通った18042番目の軌道から、コロリョフクレーターの存在がはっきりと捉えられた。このクレーターの直径は82km、中には厚さ約1.8kmの氷を1年中携えている。東経165°、北緯73°に位置しており北極の近くに位置している。
コロリョフクレーターに厚い氷がどのようにして存在しているのか。それはコロリョフクレーターの上空を通過する空気が冷やされてクレーターの中に沈み、その空気の層が何層も重なることによって冷たい温度を保つことができるとしている。この空気の層が楯となって氷が安定的な状態を保ち、温度が上がるのを防ぐと考えられる。
ちなみにこのコロリョフクレーターの名前は、宇宙探査機の開発者であるロシアのセルゲイ・コロリョフから採用されている。
ESAが火星に生命が存在するかどうかを調査することを目的としたエクソマーズ計画においてもこのコロリョフクレーターは興味のある研究対象となっており、今後さらなる知見が得られることが期待されている。
( C ) ESA/DLR/FU Berlin
火星のコロリョフクレーターの合成写真
( C ) NASA MGS MOLA Science Team
コロリョフクレーターを通過したマーズ・エクスプレスの軌道を示し、そのまわりの地形の高低を色分けしたもの。