・ジーンズ方程式

 

このグラフはジーンズ方程式を離散化して、距離rに対する密度分布ρをプロットしたものです。ジーンズ方程式は以下の式で表されます。

 

1 ρ r ( ρ σr2 ) + 2 r ( σr2 - σt2 ) = - Φ r

 

ρ は密度、 r は距離、 σ r 2 は視線速度分散の2乗成分、 σ t 2 は接線速度分散の2乗成分、 Φ はポテンシャルを表します。今回はこのジーンズ方程式のポテンシャルに重力ポテンシャルを導入して、ジーンズ方程式を離散化して距離に対する密度分布をプロットしてみました。上のグラフにおける赤い線は接線速度分散が発達している場合、青い線は視線速度分散と接線速度分散が等しい場合(速度分散が等方性をもつ)、緑色の線は視線速度分散が発達している場合を想定して、ジーンズ方程式を数値的に解いて距離に対する密度分布をプロットしたものです。

 

赤い線のように、接線速度が発達していると、外側に向けて密度分布の減り方が遅くなり、外側に向けて多くの質量が分布する様子がわかります。一方緑色の線のように視線速度が発達していると、外側に向けて密度分布の減り方が速くなるようすがわかります。

 

赤い線のように接線速度が発達していると、外側に向けて多くの質量が分布する様子は、ポテンシャルとして遠心力ポテンシャルを導入することによって説明がつきます。遠心力ポテンシャルがあることで外側に向けて質量が多く分布する様子がわかるのです。

 

ジーンズ方程式を数値的に解くというものがある一方、別のアプローチとして、統計力学を用いる方法があります。マックスウェル・ボルツマン分布を用いてハミルトニアンに遠心力ポテンシャルを導入し、数値的に解くことによって密度分布関数を解くことができます。しかしこちらの方法では数学的にものすごく手間のかかる計算が必要となります。しかしその分、遠心力ポテンシャルが表す物理的描像が詳しく描かれることになるのです。

 

今回のジーンズ方程式の数値的計算はとてもシンプルであり、視線速度分散、接線速度分散の値を用いて、密度分布を数値的に求めることができるようになります。人工衛星Gaiaのデータを解析することによって、あらゆる天の川銀河内、もしくは天の川銀河近傍における天体の視線速度分散、接線速度分散を求めることは可能になっているため、回転による天体の物理的描像を描くことが可能です。