オーロラ

 上の画像はオーロラの基となる荷電粒子が簡易的な運動をすると想定した場合に、どのような発光現象を示すのかを示したものです。荷電粒子の初期値はベジェ曲線+sin カーブに沿っているものとし、単純に一定速度で落下していき下方で様々な分子、原子と衝突して発光する様子を表現しました。

 

 オーロラとは、太陽から地球に向かってくる荷電粒子が地球の上層大気において酸素原子や窒素分子などと衝突して発光する現象です。

 

 まずはオーロラを生み出す荷電粒子がどのようにして地球にやってくるかを説明します。重要な鍵となるのが、太陽風です。太陽風とは太陽から常時吹き出しているガスのことであり、電気伝導度の高いプラズマ(ほぼ同量の陽イオンと電子を主体とする電荷を帯びた粒子の集まりで全休としては中性である)の流れになっています。太陽活動によって生じた荷電粒子は太陽風によって地球に向かってきます。また地球は大きな磁石になっていて、南極から北極に向かう磁力線が存在し、これを地磁気といいます。この地磁気は太陽風によって地球の影になっている部分においては図1のように特殊な形をしています。太陽風が太陽の磁場を引きずるような形で運ぶからです。地球の昼(太陽に面している)側では地球に向かってきた太陽風が地球の磁場によって進路を妨げられます。図1のように、太陽風は地球の磁場の圧力とちょうど釣り合う位置まで地球の磁場を圧縮し、そこから四方に分かれて地球を包み込むように後ろへ流れており、それに伴って地球の磁力線が吹き流されています。全体としては太陽風の中に細長い空洞(磁気圏)が出来ることになります。地球の夜(反太陽方向)側の長く伸びた部分は磁気圏尾部と呼ばれ、赤道面を境に、南半球では地球の南極付近に端を発した磁力線が太陽と反対方向にのび、北半球では太陽方向に向いて北極付近に集まっているような形をしています。
 この反対方向を向く磁力線の間のスペースは、磁場が弱いために荷電粒子がたまりやすく、プラズマシートと呼ばれます。プラズマシート中の荷電粒子は、エネルギーを得て加速しながら磁力線に沿って地球に向かっていきます。このエネルギー源は、電磁イオンサイクロトロン波動と呼ばれる電磁波であると考えられています。ある特定の粒子は磁力線に沿ってサイクロトロン運動をしながら進んでいきますが、同じく磁力線方向に進む電磁波と角速度が同じである場合に共鳴し、粒子から電磁波にエネルギーが渡されると考えられています。エネルギーを得た電磁波は電磁イオンサイクロトロン波動と呼ばれますが、また別の同じ角速度で運動する粒子にエネルギーを渡します。電磁イオンサイクロトロン波動の影響により、粒子同士は衝突せずともエネルギーのやりとりを行い、高エネルギー状態になった荷電粒子が発生することになります。

 

 高エネルギー状態になった荷電粒子は、ローレンツ力によって磁力線に沿ってサイクロトロン運動をしながら流れていきます。地磁気の最終地である北極付近もしくは磁力線が通じる南極付近の地上に荷電粒子が降り立つことになります。地上に降り立つ前には、大気圏が存在し、この大気圏の電離層(高度80km~約500km)における酸素原子や窒素分子と衝突することで酸素や窒素が励起状態となり、もとの電位に戻ろうとするときに発光現象を起こすのです。酸素であれば緑や赤色の光、窒素であれば紫色等の光を放出します。

 

 

図1 太陽風によって引き伸ばされた地磁気線

(C) 気象庁 地磁気観測所

 

 

 

図2 地表の磁場強度分布

(C) 気象庁 地磁気観測所

 

 地磁気について補足すると、地磁気は図2のような分布になっていて極地方で大きな値を示しており、赤道付近の低緯度地方で小さな値を示す傾向があり、大体25,000nT(ナノテスラ。磁束密度の単位)(南米大陸中心付近の値)から65,000nT(オーストラリア南方の南極大陸海岸付近)の値をとります。私たちが通常使用している磁石のおよそ1/1,000~1/10,000倍の値であり、非常に小さな磁束密度であることがわかります。