・膨張する宇宙

 

 

 宇宙はとても広い世界ですが、どのようにして誕生してどのように成長していくのかは謎が残されたままです。今回はその謎にふれていきます。

 

 宇宙空間は最初何もない世界から膨張し、現在も成長を続けていると考えられています。その根拠としては、はるか遠くの天体が我々からどんどん遠ざかっていく姿が観測されていることにあります。どんどん遠ざかっていく姿は、観測する天体の光の情報からドップラー効果が起きているかを見ることによって判断することができます。

 

 それではこの宇宙空間が広がりを見せていく方程式をどのように表現するのでしょうか。アインシュタインは1916年に一般相対性理論を発表しました。一般相対性理論は「等価原理」と「一般共変性の原理」という難しい言葉の原理を満たす物理学的な考え方です。例えば、本質的な重力場と加速度運動に伴う見かけの重力場が区別できないというのが等価原理であり、時間と空間が融合した4次元の時空における任意の座標変換に対して物理法則が変わらないとした原理が、一般共変性の原理です。これらの原理を満たす座標変換を行うのが一般相対性理論ですが、その計算はとても複雑です。

 

 宇宙空間が広がる、つまり宇宙膨張を表す式は宇宙方程式と呼ばれますが、一般相対性理論を基にした厳密な宇宙方程式が存在します。しかし一般相対性理論を用いなくてもニュートン力学である程度の考察をすることができるのです。

 

 ニュートン力学を基にした宇宙方程式はフリードマン方程式と呼ばれます。ロシアのフリードマンは一般相対性理論に基づいた方程式を導き出しましたが、これはニュートン力学を基にしても導き出すことができるのです。

 

 上の画像はそのフリードマン方程式を、全ての係数を1として、時間とスケールファクター(宇宙の広がり具合)の関係を表したものです。フリードマン方程式には曲率と呼ばれる定数Kが存在し、画像の青い線がKの符号がマイナスの場合、緑色の線がK = 0 の場合、赤い線がKの符号がプラスの場合を表しています。青い線は開いた宇宙、緑色の線は平坦な宇宙、赤色の線は閉じた宇宙と呼ばれます。開いた宇宙は、宇宙の物質密度が臨海密度より小さい場合に、物質の重力作用で膨張を止められないため、宇宙膨張が加速しながら永遠に続くことを示しています。平坦な宇宙は物質の重力と宇宙膨張の勢いがちょうどつりあった状態であり、宇宙膨張が一定の割合で永遠に続くことを示しています。閉じた宇宙は、宇宙の物質密度が十分に大きく、物質の重力を振り切って膨張を続けることができなくなり、宇宙の膨張がやがて収縮に転じることを示しています。

 

 現在は様々な観測結果から、宇宙は開いた宇宙であり、加速膨張をしていると考えられています。そもそもこの膨張を引き起こすエネルギーはダークエネルギーと呼ばれていますが、その起源は現在においても不明です。