リンドブラッド共鳴

 リンドブラッド共鳴を説明するために、最初に銀河円盤中で円運動をする天体が、その場所におけるポテンシャルの摂動によって、天体の動きが微妙にゆらぐ運動を考えていきます。銀河円盤の重力ポテンシャル中でほぼ円運動する天体の運動は、中心周りを円運動する点の周りに微小な半径で楕円運動する(周転円運動)という形で記述できます。この微小半径の楕円運動の角速度を周転円角振動数と呼び、記号κで表します。力学計算を行うと、κは遠心力も考慮に入れた実効ポテンシャルの2階微分の平方根に一致することがわかり、一般に重力ポテンシャルの形状によって大きさが決まります。一方でこの銀河にパターン速度Ω_bで回転する弱い2本腕の非軸対称ポテンシャル(渦巻形)があるとして、ある半径を公転する天体の公転角速度Ωが

 

m(Ω-Ω_b)=±κ (mは正の整数)


を満たしていると、平均円運動からのずれに対する振動と非軸対称ポテンシャルによる摂動とが共鳴を起こします。これをリンドブラッド共鳴と呼びます。


多くの銀河の重力ポテンシャル形状では、リンドブラッド共鳴が発生する半径はΩ=Ω_bとなる共回転半径の内側と外側にでき、内側のもの(κの符号が+である)を内部リンドブラッド共鳴(inner lindblad resonance)、外側のもの(κの符号がマイナスである)を外部リンドブラッド共鳴(outer lindblad resonance)といいます。なおΩ=Ω_bの場合は共回転共鳴(corotation resonance)といいます。内部と外部は共回転半径に対する幾何学的位置で呼び分けるため、内部リンドブラッド共鳴半径が2つ以上存在することもありえますし、リンドブラッド共鳴半径が存在しない銀河もあるとされています。

 

以下に共回転共鳴、内部リンドブラッド共鳴(Ω=Ω_b+κ)の場合、外部リンドブラッド共鳴(Ω=Ω_b-κ)の場合のアニメーションを掲載します。今回はΩ_b=0.01、κ=0.006として設定し、内部リンドブラッド共鳴の角速度Ωは0.016、外部リンドブラッド共鳴の角速度Ωは0.004となるように設定しています。また重力ポテンシャルはプラマーモデルを採用しています。青色の線が通常の円運動の軌跡であり、緑色の線は円運動+周転円運動の軌跡を示しています。

 

 

 

共回転共鳴

 

 

 

内部リンドブラッド共鳴

 

 

外部リンドブラッド共鳴

 

銀河は渦を巻くものが多いですが、この渦を巻くのは、リンドブラッド共鳴を通じて角運動量輸送が行われているからであると考えられています。内部リンドブラッド共鳴によって角運動量を失い、その失われた角運動量が外部リンドブラッド共鳴によって対象の天体に伝わると考えらています。