7月25日

 

 

 オランダ・ライデン大学のアレクサンダー・ボーン氏(ポストドクター)を中心とする研究グループは22日、ヨーロッパ南天天文台(ESO)のVLT望遠鏡を用いて地球から南天の星座である“はえ座”方向300光年離れた位置にある太陽に似たTYC8998-760-1と呼ばれる恒星を直接撮像によって観測した結果、この恒星のまわりを2つの巨大なガス型惑星が周回しており、太陽系外惑星を成していることが判明したと発表した。これまでに直接撮像による方法で2つ以上の惑星が周回している太陽系外惑星系は発見されていなかった。今回の観測結果は、惑星が太陽のような恒星の周りでどのように形成されて進化してきたかを理解するうえで重要な手掛かりになるとしている。

 

 これまでにトランジット法などの間接的な撮像方法によって太陽系外惑星は数千もの数が発見されてきているが、直接撮像方法では今回の観測結果を含めて2例しかない。研究チームの1人であるライデン大学のマシュー・ケンワージー准教授は、「直接撮像方法による観測結果は、惑星の環境が生命の生活を維持できるかどうか(ハビタブル・ゾーンの有無)の研究を行う上で重要である」とコメントしている。

 

 研究チームは太陽のような星を含む、若くて巨大な惑星系を研究することを目標としていた。そして実際にESOのVLT望遠鏡によってTYC8998-760-1を観測した結果、図1のような写真を撮影することに成功した。図1で示した右下2つの明るい点が今回発見された太陽系外惑星である。2つの惑星は主星のまわりを太陽-地球間距離のおよそ160倍と320倍離れた場所に存在する。この距離は太陽系で見ると、太陽と木星、土星間(それぞれ太陽-地球間距離の5倍、10倍)の距離よりもはるかに遠い。また質量についても、太陽系に比べるととても重いことが判明し、内側にある惑星は木星質量の14倍あり、外側にある惑星は木星質量の6倍あることがわかった。またTYC8998-760-1は生まれてから1,700万年しか経過しておらず、若い恒星であり、進化の初期段階にあることもわかった。

 

 研究チームは将来完成予定のExtremely Large Telesope (ELT)によって更なる観測が行われることでTYC8998-760-1の惑星系の詳細が明らかになることを期待している。具体的に検証する項目としては、今回発見された2つの惑星が主星からの距離が変わっていないか、もしくは近づいたり離れたりしているかどうかという点である。また2つの惑星間における相互作用を検証することも重要な点であるとしている。ボーン氏はELTへの期待について「ELTは今回発見された惑星よりも小さい質量の惑星を見つけることが可能である。もしそのような質量の小さな惑星が見つかれば、TYC8998-760-1が太陽系と同じような多くの惑星をもつ惑星系であることにより、太陽系の歴史を探るうえで大きな手掛かりとなるだろう」とコメントしている。

 

 

図1 ( C ) ESO

VLTによる直接撮像によって捉えられた、TYC8998-760-1をとりまく惑星系。左上の星が恒星であり、そこからみて右下2つが惑星である。