2月6日

 

 

 スイスのジュネーブ/ベルン大学のAdrien Leleu氏を中心とする国際研究チームは1月25日、ESOのVLT望遠鏡を用いてちょうこくしつ座方向200光年にある恒星、TOI-178を観測した結果、この恒星が6個の太陽系外惑星を持つ惑星系を成していることが判明したと発表した。また6個のうち5個の惑星が普通の惑星系では見られない稀な整数比をもつ公転周期比で中心の恒星を公転しているとしていることがわかった。今回の発見は我々が住む太陽系がどのように形成され、進化してきたかを解明する上で重要な鍵になるとしている。

 

 研究チームはESAのCHEOPS、NGTS、SPECULOOSと呼ばれる人工衛星を用いてトランジット法によってTOI-178における惑星を見つけ出し、ESPRESSOという装置を用いて、視線方向速度を測定することとした。その結果、TOI-178を周回する6個の惑星を発見することに成功した。6個のうちの5個の惑星は他の惑星系では見られない稀な公転周期比を持つ軌道共鳴(*注1)をしていることが判明し、惑星の公転周期比は18:9:6:4:3であることがわかった。もう一つ惑星の公転軌道周期は、今後の新たな観測と、今回の5個の惑星の公転周期比の計算結果と合わせて特定することが可能であるとしている。木星の衛星の公転周期比が4:2:1であることから、5個の惑星の公転周期比の複雑さがわかる。公転周期が一番長い惑星が恒星を18周している間に、その次に公転周期の長い惑星が9周公転し、以下続くといった具合である。研究チームの一人であるベルン大学のYann Alibert氏は「TOI-178惑星系では惑星が非常に整った公転周期比をしている。これはこの惑星系が生まれてから、大きな衝突もなく、静かに進化してきたことを示している。」とコメントしている。もし大きな衝突が起きていれば、整数比で整った公転周期比は崩れていく。

 

 しかしきちんとした公転周期比とは対照的に、惑星密度比がそれに準じてきちんと並んでいないという問題が生じた。ジュネーブ大学のNathan Hara氏は「公転周期比がきちんとした整数比で並んでいるにもかかわらず、惑星の密度がそれに準じてきちんと並んでいない。地球と同じくらいの密度を持つ惑星のとなりにあるのは、ガス型惑星である海王星の半分ほどの密度である“ふわふわ”した惑星であり、そのとなりにあるのは海王星と同じくらいの密度の惑星である。」とコメントしている。レレウ氏は、「惑星の密度比が公転周期比に対してきちんと並んでいないのは、惑星系システムに対する我々の理解に対して異議を唱えるものである」とコメントしている。

 

 またその他の観測結果として、TOI-178における惑星のサイズは地球の1~3倍の大きさであることが判明した。質量は地球の1.5倍から8倍の大きさであり、いくつかの惑星は地球よりも大きな岩石型惑星である“スーパーアース”であるとしている。その他の惑星は太陽系の外側の惑星のようなガス型惑星であり、“ミニネプチューン”と呼ばれている。また6個の惑星はいわゆる“ハビタブルゾーン(生物生存可能性)”の性質は持ち合わせていないとしている。

 

 研究チームは今後運用開始予定のELT望遠鏡を用いて、今回特定された公転周期比を基にしてその他の太陽系外惑星系を発見することを目標としている。またELT望遠鏡によって、TOI-178惑星系における地球型惑星のようなハビタブルゾーンの存在可否を確かめること、大気の状態を調べることなどによって、TOI-178を含めた太陽系外惑星系のより詳細な情報がもたらされることが期待されている。

 

*注1 中心天体の周りを公転する二つの天体が互いに重力を及ぼし合う結果、両者の軌道が変化すること。軌道共鳴により軌道は安定化する場合もあるが不安定になる場合もある。公転周期の時間スケールで影響する平均運動共鳴と、それよりも遥かに長い時間スケールで影響する永年共鳴がある。

 

 

 

( C ) ESO/L. Calçada/spaceengine.org

TOI-178惑星系のイメージ図。惑星と中心星の物理パラメーターと宇宙における様々な過去のデータベースを基にして描かれた。