6月19日

 

 

 Miguel Montargès氏(lesia astro(フランス・パリ)のポストドクター)を中心とする研究チームは16日、ESOのVLT望遠鏡を用いた観測により、2019年12月から2020年の3月にかけて、ベテルギウス(オリオン座)からの光が暗くなる様子を鮮明に捉えることに成功したと発表した。特に南半球において減光が顕著であり、ベテルギウスが塵の雲に覆われたことによって暗くなったとしている。Miguel氏は「かつて数週間単位でのベテルギウスの光の変わり具合を観測したことはあるが、今回のように長い期間で光が変化する様子を捉えたのは今回が初めてである」とコメントしている。

 

 冬の星座の代表格であるオリオン座のベテルギウスは、太陽の約20倍の質量を持つ赤色巨星であり、恒星進化の最終段階にあると考えられている。今回のベテルギウスの減光は、星の死を意味するスーパーノヴァ爆発現象の兆候であることも推測された。しかし今回の研究成果によってそれが否定されたこととなる。

 

 研究チームは2019年後期に、目視でベテルギウスの光が減光していることに気づいた。そこで2019年12月に、ESOのVLT望遠鏡によって撮影されたベテルギウスと同年1月に撮影されたベテルギウスの画像を比べた結果、南半球の領域において減光していることが判明した(図1)。しかしなぜ減光したかについては詳細が不明であった。

 

 研究チームは目視による減光に気づいた後もベテルギウスのVLT望遠鏡による撮影を続けた。その結果、2020年の1月と3月においてこれまでに見たことがないような暗さとなり、4月にはまた元の光の明るさに戻る様子を捉えることに成功した。またベテルギウスが減光した理由を探るべく、VLT望遠鏡のデータを解析した結果、ベテルギウスの表面温度が下がったために、塵の雲がおおいかぶさったことが理由として考えられるとの結論に至った。ベテルギウスの表面は、大きな泡のようなガスが動いたり縮んだり膨らんだりすることで、常に変化している。この大きな泡のようなガスが、ベテルギウスから放出されることで表面温度が下がる。そして表面温度が下がるとガスが凝縮され、塵が形成される。研究チームの1人であるエミリー・キャノン氏(ルーヴェン・カトリック大学(ベルギー))は「私達が見ているベテルギウスから放出された塵は、地球型惑星や生命の元になりうるかもしれません。」とコメントしている。

 

 研究チームは「今後建設予定のELT望遠鏡によって、赤色巨星であるベテルギウスの詳細な姿を捉えることが可能になり、大気の構造について理解を深めることが可能になる」と今後の期待についてコメントしている。

 

 

図1 ( C ) ESO/M. Montargès et al.

ESOのVLT望遠鏡によって撮影されたベテルギウスの様子。一番左は2019年1月に撮影されたベテルギウス(通常の様子)、その次は2019年12月、続いて2020年1月、3月のベテルギウスの姿である。減光していることが明らかであり、特に南半球で減光が顕著である。