8月28日

 

 

 スウェーデン王立工科大学のLorenz Roth氏を中心とする研究グループは7月26日、2018年にNASA/ESAのハッブル宇宙望遠鏡によってガニメデ(木星衛星)を紫外線で観測したデータと過去のデータを解析した結果、ガニメデの大気において地表面の氷から昇華した水蒸気を検出することに成功したと発表した。

 

 木星衛星の一つであるガニメデは太陽系において最も大きい衛星である(図1)。また地球の海の水よりも多くの水を持っていると考えられている。しかし大気温度がとても冷たいがゆえに、地表にある水は氷となり、地殻下に160kmの氷の海を形成している。1998年にはハッブル宇宙望遠鏡によってガニメデの紫外線写真が撮影され、地球でも見られるようなオーロラオーバルがあることが示された(図2)。オーロラオーバルが存在することにより、ガニメデにも永久的な磁場が存在することが示されたと同時に、酸素分子O2、原子Oも発見された。

 

 ガニメデにおいては、液体の水が直接発見されたわけではないが、水があるところには生命が存在すると通常では考えられるため、ガニメデが生物生存可能な衛星であるためには、液体の水が存在するかどうかが鍵となる。今回の研究成果は、氷表面から昇華した水蒸気が発見されたために、液体の水が存在する可能性があることも示された。

 

 そもそも研究チームは2018年、ガニメデの大気の酸素量を捉えるべく、ハッブル宇宙望遠鏡に搭載されたCOS機器(紫外線を撮影)でガニメデ大気のデータを取得し、1998年に撮影されたデータを組み合わせて、ガニメデ大気の解析を行っていた。その結果、大量の酸素を発見することに成功した。ガニメデの表面温度は1日で大きく温度が変わるとしており、昼近くでは赤道の地表面の氷から水分子が昇華するほどの温度になることが示唆されている。昇華した水蒸気から酸素が形成されるとRoth氏は説明している。

 

 ESAでは2015~2025年にかけてJUICE(Jupiter Icy moons Explorer)というミッションを掲げており、木星衛星の研究を行っている。2022年に人工衛星を打ち上げ、2029年に人工衛星が木星に到着し、3年かけて3つの大きな木星衛星を観測する予定である。特にガニメデの探索を行って、生物生存可能性があるのかどうかの研究が大きな注目を集めている。Roth氏は「今回の研究成果がJUICEミッションにおいて木星衛星の研究を行うチームが観測計画を立てる際に有益な情報となるだろう」と研究成果の意義についてコメントしている。

 

 木星や、木星衛星の環境が詳細にわかれば、どのようにしてガス惑星とそのまわりの衛星が形成され進化してきたかがわかるようになる。また研究チームは今後の新たな発見によって木星のような太陽系外惑星系システムにおいて、生物生存可能性が発見されることを期待している。

 

 

図1 ( C ) NASA

ガニメデの写真。

 

 

図2 ( C ) NASA/ESA/L.Roth

1998年にハッブル宇宙望遠鏡によって撮影されたガニメデのオーロラオーバルの様子。酸素原子が出す2種類の紫外線によって撮影された。