10月23日

 

 

 アストロバイオロジーセンター/国立天文台ハワイ観測所の平野照幸助教を中心とする研究チームは22日、すばる望遠鏡等を用いた直接撮像観測により、地球から約420光年離れたおうし座星形成領域において、若いM型矮星(*注1)に付随する年齢200~500万年ほどの惑星「2M0437b」を発見したと発表した。これまで見つかった太陽系外惑星の中で、最も若い惑星であるとしている。また観測データの解析から 2M0437b の質量は木星の3~5倍と見積もられ、「スーパージュピター」と呼ばれる。このような質量の大きなスーパージュピターが、太陽よりも小さな小質量星であるM型矮星のまわりで形成されるのは、従来の惑星形成モデルでは困難であると考えられており、惑星形成理論に再考が迫られる重要な研究成果であるとしている。

 

 太陽系外惑星のほとんどは、主星(惑星系の中心にある恒星)の観測から間接的に惑星の存在を検出する「間接法」によって見つかっている。間接法の主流はトランジット法であり、主星の前を惑星が通過する際にわずかに光が減光する場面を捉えて、これが周期的に起これば惑星の存在を認識するという方法である。直接撮像によって惑星を捉えるのは光をあまり発しない惑星を探すのには向いていない。しかし今回発見された惑星の主星「2M0437」は、地球から約420光年離れたおうし座星形成領域にある生まれたばかりの恒星であり、同時期に作られる惑星が恒星の熱を帯びることによって近赤外線で明るく輝くため、太陽系外惑星探査を行う上で直接撮像法が向いていると考えられた。研究チームはこの若い惑星の性質を利用して、すばる望遠鏡の近赤外線分光撮像装置 IRCS と補償光学装置 AO188 を用いて直接撮像により主星「2M0437」まわりの天体観測を実施することとした。

 

 実際に2018年にすばる望遠鏡による「2M0437」まわりの惑星候補天体の直接撮像観測を実施した結果、2M0437 から 0.9 秒角離れた位置において惑星候補天体「2M0437b」を発見することに成功した(図1)。次に2M0437b が主星まわりの背景の星ではなく、確かに 2M0437 を周回する惑星であることを確かめる観測が必要であるが、この観測にはすばる望遠鏡のほか、同じマウナケアにあるケック望遠鏡などが使用された。約3年にわたる追観測で惑星候補天体の動きを精密に追う事により、主星と惑星が互いの重力で結ばれた惑星系であることが確認された。

 

 またIRCS などで観測された明るさから、2M0437b の質量が木星質量の3~5倍程度とであることが判明した。これは直接撮像観測で見つかった系外惑星の中でも最も軽い部類であるとしている。またこの惑星系の年齢は200~500万年と推定されており、確実に惑星と呼べる、10 木星質量以下の天体の中では最も若い惑星が発見されたことになる。

 

 従来の惑星形成理論では、M型矮星のような質量の小さな星の場合、2M0437bのような巨大惑星が数百万年という短期間で、主星からある程度離れた位置(今回は約100天文単位)に形成されるのは難しいと考えられていた。そのため今回の研究成果は従来の理論モデルを覆す結果となり、理論モデルの再考が迫られることとなる。

 

 平野氏は、「惑星からの光を直接捉えることで系外惑星が発見された例はあまり多くなく、年齢が 1000 万年を下回る惑星にいたっては数例しか見つかっていません。今回発見された惑星はその中でも特に若く、非常にユニークな惑星系です。今後、すばる望遠鏡に加えて、ジェイムズウェッブ宇宙望遠鏡(2021年末に打ち上げ予定の赤外線望遠鏡)などによるさらなる観測で惑星の大気などを調べ、生まれたての惑星がどのような性質を持っているのか明らかにしたいと考えています」と今後の展望についてコメントしている。

 

*注1 ハーバード分類で表面温度の系列に属する非常に低温の星であり、表面温度は~3,900Kの光が弱い星のこと。いわゆる赤色矮星。2M0437の有効温度はおよそ~3,100Kであり、質量は太陽の0.15~0.18倍程度。

 

 

図1 ( C ) ハワイ大学

すばる望遠鏡の IRCS と AO188 によって捉えられた 2M0437 惑星系。惑星(2M0437b)は主星から、約 100 天文単位(太陽-地球間距離の 100 倍)離れた位置にある。主星の光はデータ解析でほぼ取り除かれている。十字のパターンは副鏡をささえるスパイダーの影響で見える人工的なものである。