12月11日

 

 

 スウェーデン・ストックホルム大学のMarkus Janson氏を中心とする国際研究チームは8日、VLT望遠鏡に搭載されたSPHERE(分光偏光高コントラスト太陽系外惑星探査)の観測装置を用いてケンタウルス座方向325光年先にある連星系b ケンタウリ星を観測した結果、この星のまわりを周回する惑星の詳細な姿を捉えることに成功したと発表した(図1)。惑星は太陽-木星間距離の100倍の距離にある軌道を周回しており、質量は木星質量の10倍であり、b ケンタウリ b星と名付けられた。その一方で主星である連星系b ケンタウリ星の総質量は、太陽質量のおよそ6倍の質量を持っており、B型星(*注1)に分類されるが、このような大質量星はエネルギーの強いX線や紫外線を放出するため、惑星が形成されるのは困難であると考えられていた。今回の発見はこれまで発見された惑星系の中では主星の質量及び温度が最も高く、最も重い惑星、最も広い範囲を周回する惑星の姿を捉えたこととなるとしている。

 

 連星系b ケンタウリ星は太陽質量の約3倍以上の質量を持つB型星に分類されるが、このタイプの星は温度が高く、大量のX線や紫外線を放出するため、まわりのガスに大きな影響を及ぼす。ガスは強いエネルギーを持つ放射線の影響で蒸発してしまうのである。その結果、惑星形成が阻害されると考えられている。

 

 研究チームは20年以上前にESOの3.6m望遠鏡を用いてb ケンタウリ星まわりの惑星候補天体を発見することに成功していたが、これまでにそれが確かな惑星であるかどうかを確認することができていなかった。

 

 今回研究チームはVLT望遠鏡に搭載されたSPHERE(分光偏光高コントラスト太陽系外惑星探査)の観測装置を用いて、再び連星系b ケンタウリ星を観測対象として太陽系外惑星を探索することとした。その結果、主星のまわりを、太陽-木星間距離の100倍の距離に位置する場所の軌道を周回する惑星を発見することに成功した(図1)。惑星はb ケンタウリ b星と名付けられたが、木星質量の10倍の質量を持つ巨大惑星であり、これまで発見された惑星の中で最も重く、最も主星から離れた軌道を周回する惑星であるとしている。惑星が成長するのに過酷な環境において、このような巨大な惑星が発見されたことは、惑星がどのように形成されたかを研究する上でとても重要な成果であるとしている。

 

 現在ELT望遠鏡の建設中であり、10年後に観測開始が予定されている。このELT望遠鏡によって、連星系b ケンタウリ星のまわりの惑星がどのような特徴を持っていて、どのように形成されたのかが明らかになることが期待されている。Janson氏は「連星系b ケンタウリ星の惑星がどのようにして形成されたのかは謎であるが、それを明らかにすることはとても興味のあることである」とコメントしている。

 

*注1 ハーバード分類で表面温度の系列に属する高温の星。表面温度は~29,000(K)。質量は太陽の約2.5-12倍。

 

 

( C ) ESO/Janson et al.

SPHERE(分光偏光高コントラスト太陽系外惑星探査)の観測装置を用いて撮影された連星系bケンタウリ星(左上)と今回新たに見つかった惑星(右下のドット)の写真。連星系bケンタウリ星の総質量は太陽質量の6倍であり、惑星は木星質量の10倍の質量を持つ。bケンタウリ星と惑星の間の距離は太陽-木星間距離の100倍である。右上のドットは背景の星である。