12月25日

 

 

 ボルドー天体物理学研究所/ウィーン大学のNúria Miret-Roig氏を中心とする研究チームは22日、ESOのVLT望遠鏡などを用いたデータ解析によって、さそり座/へびつかい座方向のへびつかい座ロー分子雲星形成領域において、70ものはぐれ惑星(主星のまわりを回っておらず、自由浮遊している)を発見することに成功したと発表した(図1)。はぐれ惑星は木星質量と同程度の質量を持っているとしている。今回の発見ははぐれ惑星がどのようにして形成されるのか、またその特性を知るうえで重要な研究成果であるとしている。

 

 はぐれ惑星は明るく輝く星から遠く離れた場所に潜んでおり、かすかな光しか放出せず、可視光で捉えるのは困難である。研究チームは、はぐれ惑星が形成されてから数百年後においてもなおこのはぐれ惑星が成長段階にあると予測し、成長段階にあるはぐれ惑星が放出するであろう可視光、赤外線などを捉えることで、はぐれ惑星の発見につなげることとした。望遠鏡で捉えられた可視光、赤外線の光の強さや色合いを見て、はぐれ惑星の特徴を示すものを捉えていくということである。はぐれ惑星の発見を目指すにあたっては過去20年間分のESOのVLT望遠鏡、VISTA(可視光及び赤外線望遠鏡)などのデータを用いた。またESAの全天位置天文衛星Gaiaのデータも解析した。

 

 データの解析の結果、さそり座/へびつかい座方向にあるへびつかい座ロー分子雲星形成領域において木星質量と同程度の大きな質量を持つ70ものはぐれ惑星を発見することに成功した。共同研究者の一人であり、今回の研究のプロジェクトリーダーであるボルドー天体物理学研究所のHervé  Bouy氏は「これだけ多くの望遠鏡によるデータが存在することから、大きな質量を持つはぐれ惑星はこれからもどんどん発見されていくと考えている。その数は数十億になるだろう。」とコメントしている。

 

 今回の発見ははぐれ惑星が、どのように形成されたか、またその特性がどのようなものであるのかという研究につながる。一般的に研究者たちは、はぐれ惑星の形成起源として2つの説を提唱している。一つ目は小さなガス塊同士の衝突によって惑星が形成された説である。なお小さなガス塊同士の衝突であると、星の形成が難しいとされている。もう一つの説は、惑星がその起源である惑星系において、その惑星系から弾き飛ばされたという説である。どのような仮説が適切であるかは未だに未解明の問題である。

 今後、チリに建設中のELT望遠鏡によってはぐれ惑星の謎が解かれることが期待されている。Bouy氏は「現在の望遠鏡技術では、かすかな光しか出さないはぐれ惑星の発見を効率よく行うことができない。ELT望遠鏡によってより多くの情報を効率よく手に入れることが可能であり、多くのはぐれ惑星の発見につながることが期待される」とコメントしている。

 

 

( C ) ESO/Miret-Roig et al.

ESOのVLT望遠鏡、VISTA望遠鏡によって、さそり座/へびつかい座の上方部分の小さな領域を可視光と赤外線を用いて捉えた画像。赤いドットがはぐれ惑星である。写真の中央にはぐれ惑星が集中していることがわかる。

 

 

( C ) ESO/M. Kornmesser

はぐれ惑星とその背景にあるへびつかい座ロー分子雲のイメージ図。はぐれ惑星は主星の周りを回っておらず、自由浮遊する天体である。今回発見されたはぐれ惑星たちは、木星質量と同程度の大きな質量を持つ。