ラグビーボールのように変形した太陽系外惑星を発見

1月15日

 

 

 ポルト大学のSusana Barros氏を中心とする国際研究チームは11日、太陽系外惑星探査を行っているケオプス探査機の新しいデータ、既存のハッブル宇宙望遠鏡、スピッツアー宇宙望遠鏡のデータを解析した結果、ヘルクレス座方向にある恒星WASP-103を1日以内で周回するラグビーボールのように変形した惑星(WASP-103b)を発見したと発表した。惑星探査を行う方法としては、恒星の前を惑星が通過すると減光する現象を捉えることで惑星候補天体の発見に至ったとする方法(トランジット法)を用いて行われている。このトランジット法によって、惑星が球体ではなく、もはやラグビーボールのように大きくゆがんだ惑星に変化していることが判明した。ラグビーボールのように大きく変形した惑星が発見されたのは今回が初めてである。またWASP-103bは木星質量の1.5倍の質量を持ち、半径は2倍であるが、木星と同じように潮汐力によって大きくゆがんでいることから(ラブ数(*注1)が似ている)、この惑星がガス惑星であることを示唆しているとしている。今後ラブ数の詳細な特定によって、惑星の内部構造を調べるのに役に立つとしている。ラグビーボールのように大きく変形する要因としては主星からの潮汐力が有力であるが、惑星の公転周期が伸びていることから、主星からの潮汐力よりも主星と連星系を成す伴星からの潮汐力の影響を受けている可能性があると研究チームは指摘している。

 

 今回観測対象となった惑星系は、ヘルクレス座方向にあるWASP-103と呼ばれる恒星を中心とする惑星系である。主星であるWASP-103は太陽質量の1.7倍であり、温度は200度ほど高い。

 

 ラグビーボールのように変形した太陽系外惑星の変形要因としては潮汐力が考えられているが、私達が住む地球上では、月の潮汐力によって潮の満ち引きを見ることができる。太陽からも潮汐力の影響を受けるが、地球から月に比べて、太陽は遠くに位置するため、地球上でうける潮汐力の大きな要因は月からのものであるということになる。その一方で木星の太陽質量の1.5倍であり、サイズが2倍であるWASP-103bは、WASP-103のまわりを1日以内で周回する。1日以内で周回するということはWASP-103bがそれだけ主星に近いことを意味しており、これだけ近いことから潮汐力が大きくWASP-103惑星に働いている。

 

 今回研究チームはWASP-103bを観測対象として、太陽系外惑星を発見と太陽系外惑星の特性を調査すべく、ESAのケオプス望遠鏡の新しいデータ、ハッブル宇宙望遠鏡とスピッツアー望遠鏡によって既に得られているデータを用いて解析を行った。その結果、WASP-103b惑星が球体というよりも、もはや大きくゆがんだラグビーボールのような形をしていることが、トランジット法を用いた調査によって判明した。またデータの解析によって、惑星が主星の前を通過する際に光の強さの度合いを光のカーブとして描くことができるが、この光のカーブによって“ラブ数”と呼ばれるパラメーターが導入され、観測対象となっている惑星がどのような密度構造をしているかがわかり、このことによって惑星の内部構造の解明につなげることができるとしている。例えば地球では潮汐力によって潮の満ち引きが起こるが、地盤自体はなにも変形がない。このことは地球が岩石質であるがために、潮汐力によって変形が起こらないことを示している。つまり潮汐力による惑星の変形度合いで、惑星が岩石質であるか、もしくはガスや水で構成されているのかなどを調べることができる。今回観測されたWASP-103bはラブ数が木星と似ていることから、同じガス惑星であることが示唆される。共同研究者であるパリ文理研究大学のJacques Laskar 氏は「ケオプス望遠鏡によってラグビーボールのように変形した惑星の姿を捉えることに成功したなんて、信じられないことだ。大きく変形した惑星の姿が捉えられたのは今回が初めてであるが、今後も何回も観測を続けることで、惑星の内部構造にも迫ることができるだろう」と今後の期待についてコメントしている。今後運用予定のジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡によって正確なラブ数の特定が行われ、惑星の内部構造が明らかになることであろう。

 

 今回ラグビーボールのように大きく変形した惑星の姿が捉えられたが、一つだけ大きな疑問が残された。通常、主星と木星のような大きなサイズの惑星が近くに存在すれば、だんだん惑星が主星に近づいていき、公転周期が1日とは言わず、もっと早くなることが予想される。しかし今回の観測結果は惑星がむしろ公転周期を長くしていき、主星のまわりの軌道速度が遅くなっていることを示したとしている。この矛盾を解消するには潮汐力以外の別の力が働いていると考えざるを得ない。Susana氏達は主星と連星系をなしている楕円形をした伴星のポテンシャルが、惑星の軌道速度を遅くしているのではないかと予測している。しかし実際にその観測はなされていない。ケオプス望遠鏡による更なる観測で、そのことが明らかになることが期待されている。

 

*注1 潮汐力によって惑星がどれだけ変形するかの度合い

 

 

図1 ( C ) ESA

ケオプス望遠鏡によってラグビーボールの形をした太陽系外惑星WASP-103bが発見された。ここではWASP-103bのいくつかの物理的性質を示している。

 

 

( C ) ESA

WASP-103b惑星と主星のイメージ図。