「マイクロノヴァ」と名付けられた白色矮星の増光現象を発見

4月23日

 

 

 イングランド・ダラム大学のSimone Scaringi氏を中心とする研究チームは20日、NASAの太陽系外惑星探査機TESSのデータとESOのVLT望遠鏡のデータを解析した結果、TV ColumbaeとEI Ursae majoris、ASAS-SNと呼ばれる3つの白色矮星において、数時間ほどの水素の核融合による爆発現象を捉えることに成功したと発表した。この爆発現象はノヴァ(新星)と呼ばれる爆発現象と同じ現象であるが、その時間の短さから「マイクロノヴァ」と名付けられた。これほど短い爆発現象が捉えられたのは今回が初めてであるとしている。

 

 ノヴァ爆発現象は連星系を構成している太陽と同じくらいの質量をもつ白色矮星に対して、伴星から水素ガスが降り積もり、その水素ガスがある質量や温度に達したときにヘリウムに融合する過程で起こる、水素の熱核暴走反応による爆発現象である。ノヴァ爆発現象は「星の死」を意味するが、この爆発が起きている間は、白色矮星は光り輝き続ける。通常のノヴァ爆発現象であれば数週間ほど光り輝き続ける。

 

 今回発見されたマイクロノヴァ爆発現象は、ノヴァ爆発現象よりも輝き続ける時間が短く、数時間程度の爆発現象である。マイクロノヴァは白色矮星から出る強い磁場に沿って伴星から水素が漏斗状に流れ込み、白色矮星の磁極において起こる水素の核融合反応であると考えられている(図1)。

 

 研究チームはNASAのトランジット法による太陽系外惑星探査機であるTESSと呼ばれる人工衛星のデータを解析している際に、異常なデータを発見した。よく見ると、これが数時間に及ぶ可視光であることがわかり、他の星においても同じ現象が起こることを発見した。これらの増光現象はTV ColumbaeとEI Ursae majoris、ASAS-SN TVと呼ばれる星で起きていることがわかった。 ColumbaeとEI Ursae majorisと呼ばれる恒星はTESSデータによって白色矮星であると断定され、ASAS-SNと呼ばれる恒星はVLT望遠鏡に搭載されたX-shooter機器のデータを組み合わせることによって、白色矮星であると断定された。つまり白色矮星で起きた短い時間の増光現象、すなわちマイクロノヴァ爆発現象の発見に至ったということである。オランダ・ラドバウド大学の天文学者であるPaul Groot氏は「水素の核融合反応が、マイクロノヴァ爆発現象を起こすが、そのエネルギーの強さは通常のノヴァ爆発現象の100万分の1程度である。そのためマイクロという名前が付けられたが、実際には2×10の16乗kgほどの質量を放出しており、これはギザの大ピラミッド35億個分である。」とコメントしている。

 

 マイクロノヴァ爆発現象が、爆発現象のレパートリーに新たに加わったが、研究チームはこの爆発現象の更に詳細な様子を捉えることを目指している。

 

 

図1 ( C ) ESO/M. Kornmesser, L. Calçada

マイクロノヴァ爆発現象のイメージ図。右上の白色矮星のまわりに水素ガスで構成された青色の原始星円盤がぐるぐる回っており、これらの星が連星系を成している。そして白色矮星から出る強い磁場に沿って、水素ガスが漏斗状に円盤から白色矮星に流れていく。白色矮星の磁極において水素ガスの核融合反応が起こり、マイクロノヴァ爆発現象が起きると考えられている。