太陽系外惑星で大気温の逆転現象を発見

4月29日

 

 

 ロンドン大学のQuentin Changeat氏を中心とする国際研究チームは25日、ハッブル宇宙望遠鏡の観測データを基に25個もの太陽系外惑星であるホットジュピター(*注1)の大気の構造を解析した結果、大気に酸化鉄や水酸化鉄があることによってこれらの物質が星の光を吸収し、地上から上層にかけて温度が上がっていくという、気温の逆転現象が生じていることが判明したと発表した。通常であれば地上から上層にかけて気温が下がっていくが、これとは逆の構造をしていることになる。今回の研究成果はホットジュピターの詳細な姿を捉えていくうえで重要な研究成果である。

 

 太陽系外惑星の研究分野では、太陽系外惑星自体の発見に注力されているが、それ以上に太陽系外惑星の特徴をとらえることに最近では大きく注目されている。しかし太陽系外惑星はとても遠くにあるため、その特徴を捉えることは困難であり、これまでの研究では特定の太陽系外惑星に偏ったり、データを大気モデルに当てはめて特徴を捉えるということしかできなかった。

 

 今回研究チームは太陽系外惑星の大気構造に関する5つの疑問を解決すべく、ハッブル宇宙望遠鏡の観測データを用いて25個ものホットジュピターと呼ばれる太陽系外惑星の大気構造を解析することとした。何のH-(水素のマイナスイオン、*注2)と金属が太陽系外惑星の大気における化学組成を示し、どのように循環しているのか、そして太陽系外惑星がどのようにして形成されたかという疑問である。ハッブル宇宙望遠鏡の観測時間はおよそ600時間であり、トランジット法によって見つかった25個の太陽系外惑星を対象としている。トランジット法とはある天体の前を星が通過した際に対象の天体が減光する現象を捉えることで、太陽系外惑星であるとする観測方法である。この方法により25個の太陽系外惑星で蝕が観測され、そのうちの17個の太陽系外惑星でトランジット(天体が星の前を通過することで星が減光すること)が観測された。これらの減光データは太陽系外惑星の大気構造を調べるうえで重要な手掛かりとなる。

 実際に解析を行った結果、いくつかの太陽系外惑星の大気において、地上から上層にかけて温度の上昇がみられることが判明した。通常の惑星であれば、地上から上層にかけて大気が薄くなっていくために温度が下がるはずである(ただし地球ではオゾン層があるために、上層に行くにつれて温度が上がるという例外も存在する。)。そして太陽系外惑星の大気温は2000Kを超える温度まで上昇することが判明した。また、このような気温の逆転現象が見られる太陽系外惑星においては水素イオン(H-)、酸化チタニウム・TiOや酸化バナジウム・VO、水酸化鉄・FeHが大気に安定的に存在することも判明した。これらの物質が恒星の光を吸収することで大気上層の気温を高めていると研究チームは結論付けた。

 

 今回の研究結果は多くの太陽系外惑星のデータを基にして解析されたが、他の太陽系外惑星の大気構造を知るうえでとても重要な手掛かりとなったとしている。また太陽系外惑星がどのようにして形成されたのかを研究する上でも、今後の観測提案においても重要な研究成果であるとしている。Changeat氏は「私達は、地球の水の起源、月の形成進化過程、太陽系の惑星の形成進化過程が何であるかなどの多くの疑問があるが、様々な観測機器がある中で、その疑問を解決するには至っていない。多くの太陽系外惑星のデータを基にした今回のような研究成果を用いて、これらの疑問を解決することを目指す。」と今後の抱負についてコメントしている。

 

*注1 太陽系外惑星のうち、質量は木星と同程度あり木星型惑星(巨大ガス惑星)と考えられるが、軌道長半径が約0.1 au以下(公転周期が約10日以下)という中心星に非常に近い軌道を持つもの。中心星からの加熱によって高温の表面を持つためホットジュピター、または灼熱巨大惑星と呼ばれる。最初に発見されたぺガスス座51番星もホットジュピターである。

 

*注2 H-(水素のマイナスイオン)は水素分子・H2やH2Oが2500Kもの高温に達したときに分離されてできる物質のことである。

 

 

( C ) ESA/Hubble, N. Bartmann

25個ものホットジュピターのイメージ図。今回研究チームは25個のホットジュピターの大気構造を解析し、いくつかの惑星において酸化鉄や水酸化鉄が見つかり、これらの物質が大気上層を温めることで大気温の逆転現象を発生させていることが判明した。