JWSTによって撮影された木星の姿

8月27日

 

 

 

図1 ( C ) NASA, ESA, CSA, Jupiter ERS Team; image processing by Judy Schmidt.

JWSTに搭載された近赤外線カメラ(NIRCam)によって撮影された木星の写真。3バンドF360M(赤色)、F212N(黄色-緑色)、F150W2(シアン)の合成画像。

 

 

図2 ( C ) NASA, ESA, CSA, Jupiter ERS Team; image processing by Ricardo Hueso (UPV/EHU) and Judy Schmidt.

JWSTの近赤外線観測(F212N(オレンジ)、F335M(シアン)の2バンド)で撮影された木星の写真。リングや2つの衛星が詳細に写っていることがわかる。

 

 NASAは22日、JWST(ジェームズウエッブ宇宙望遠鏡)の近赤外線観測によって撮影された木星の姿を公開した(図1、2)。木星の極におけるオーロラの様子や、巨大な大気渦である大赤斑の姿、2つの木星衛星(アマルテアとアドラステア)、木星まわりのリング構造などを詳細に捉えることに成功した。今後木星の詳細な構造や、木星大気の活動の様子を研究する上で貴重な資料になるとしている。

 

 木星の写真はJWSTに搭載された近赤外線カメラ(NIRCam)によって撮影された。図1は3バンドF360M、F212N、F150W2で撮影された写真であり、図2はF212N、F335Mの2バンドで撮影された写真である。近赤外線カメラのデータを実際のイメージにする際に、民間の方であるJudy Schmidt氏が協力した。ちなみにJudy Schumidt氏は大学で宇宙物理学や天文学などの勉強をしていたわけではないが、趣味として天体のイメージ化をしており、ESAのコンテストで賞をとるなど、これまでに様々な活動をしている方である。

 

 図1をみると、木星の極の部分にオーロラが光って見えることがわかる。赤く光って見えるのがオーロラである。またそのまわりには黄色と緑色になっている部分があるが、これは極のまわりを循環する“もや”の様子を捉えたものである。青く見えている部分は厚みのある雲から反射された光を表している。写真右下にある白い斑点は木星の大赤斑と呼ばれているが、これは地球のサイズよりも大きな大気渦である。太陽光を反射しているため、白く見える。また図2をみると、惑星のおよそ数百万分の1くらいのかすかな明るさで光るリングが存在することがわかる。このリングはダストから成り立っており、小さい隕石が木星の衛星とぶつかった時に飛び出した物だと考えられている。さらにアマルテアとアドラステアとよばれる衛星も写っていることがわかる。

 

 今回の木星の観測に携わったカリフォルニア大学の名誉教授であるImke de Pater氏は「率直に言って、こんなに素晴らしい写真が捉えられたのは驚きである。木星まわりのリングの様子や、小さな衛星、背景にある銀河の様子が1枚の写真に収まっているわけだから。」と今回JWSTによって撮影された木星の写真に対してコメントしている。

 

 また共同観測者であるパリ天文台のThierry Fouchet氏は、「JWSTによって捉えられた木星のデータを用いて木星における力学や化学組成を知ることができる。科学者たちは既に木星のデータ解析に取り組んでおり、新たな知見をもたらすだろう」とコメントしている。