JWSTによって捉えられた海王星の姿

10月1日

 

 

 

 

図1 ( C ) NASA/ESA/CSA and STScI

JWSTによって7/12に近赤外線カメラ(NIRCam)によって撮影された海王星の姿。海王星周りのリングや南半球で輝くメタンガスの氷からなる雲の様子がはっきりとわかる。

 

 

図2 ( C ) NASA/ESA/CSA and STScI

JWSTの近赤外線カメラ(NIRCam)によって捉えられた海王星まわりの7個の衛星。海王星左上のトリトンは海王星の重力によって捉えられたものであると考えられている。トリトンは凍った窒素に覆われ、太陽光の70%を反射するため、この写真では海王星よりも明るく輝いて見える。

 

 NASA/ESA/CSAは9月21日、ジェームズ・ウエッブ宇宙望遠鏡(以下JWST)の近赤外線カメラ(NIRCam)によって捉えられた海王星の写真を公開した(図1、2)。JWSTは海王星周りのリング構造や、赤道面における大気の様子、7個の衛星の姿を捉えた。今回の観測結果は、海王星の特徴や周りに存在する衛星との関係を深く理解するうえでとても重要な資料となる。

 

 海王星は、木星、土星、天王星とともに巨大ガス惑星の一つであり、1846年に初めて発見された。軌道長半径は約30 au、質量は地球質量の約17倍、自転周期は約16時間、平均密度は約1640kg/立方メートルである。地球から海王星までの距離は、地球と太陽間の距離のおよそ30倍ほどであり非常に遠くにあるため、これまでは詳細な観測が困難であった。海王星の大部分が水、アンモニア、メタンの氷からできており、中心には岩石からなる小さなコアがあると考えられている。外層大気は水素とヘリウムを主成分とするが、これらが主成分である木星や土星とは異なり、海王星の総質量に占める水素とヘリウムの割合は少ない。ハッブル宇宙望遠鏡による可視光画像によると、少量のメタンガスの影響によって海王星の姿は青く見える。海王星のリングはNASAの宇宙探査機、ボイジャー2号によって1989年に初めて撮影がなされており、極めて密度の低い細い5本のリングが確認された。

 

 今回のJWSTによる観測では、近赤外線カメラ(NIRCam)によって、0.6~5マイクロメートルの近赤外線の波長による海王星の探索が行われた。なおこの近赤外線の波長帯ではメタンガスが強く吸収するため、メタンガスの様子を捉えることができない。観測の結果、ボイジャー2号によって観測されたリングに加えて、海王星に非常に近い部分にあるかすかな光を出す塵でできたリングを観測することに成功した。さら海王星の南半球において、いくつかの光り輝く縞模様を構成するメタンの氷からなる雲の様子を捉えることにも成功した(図1)。この縞模様はメタンの氷からなる雲が太陽光を反射したものである。以前から南半球の極域において台風が存在することが知られていたが、その台風周りの雲の様子も確認されたとしている。

 

 また赤道面を見ると、大気の循環の様子がわかるとしている。この大気の循環は赤道面における大気が温められて上昇することによって生じ、海王星における風の流れや台風をもたらす。赤道面を循環する大気は、周りの冷たいガスに比べて暖かいため、赤外線観測によって捉えることが可能となる。

 

 また海王星には14個の衛星の存在が知られているが、今回JWSTによってそのうちの7個の衛星の姿が鮮明に捉えられた(図2)。その中には逆行衛星と呼ばれるトリトン(海王星の左上)が含まれる。トリトンは海王星の重力によって捕獲された衛星であると考えられており、凍った窒素に覆われ、太陽光の70%を反射する。トリトンが海王星より明るく輝く様子もわかる。

 

 トリトンと海王星の関係を明らかにすべく、来年にもJWSTによる観測が行われる予定であるとしている。