JWSTによって捉えられたIC 5332渦巻銀河の姿

10月8日

 

 

 

図1 ( C ) ESA/Webb, NASA & CSA, J. Lee and the PHANGS-JWST and PHANGS-HST Teams

ジェームズ・ウエッブ宇宙望遠鏡の中間赤外線観測装置(MIRI)によって観測されたIC 5332渦巻銀河の姿。渦巻腕と銀河中心にある大量の星の姿が印象的である。

 

 

図2 NASA/ESA/HST.

ハッブル宇宙望遠鏡の紫外線・可視光線観測によって捉えられたIC 5332渦巻銀河の姿。

 

 NASA/ESA/CSAは9月27日、ジェームズ・ウエッブ宇宙望遠鏡(以下JWST)の中間赤外線観測装置(MIRI)によって捉えられた渦巻銀河IC 5332の姿を公開した(図1)。ハッブル宇宙望遠鏡の紫外線・可視光線によってかつて捉えられた姿(図2)に比べて、詳細に星や渦巻部分のガス・星の姿が写っている。

 

 IC 5332渦巻銀河は地球からちょうこくしつ座方向約2,900万光年離れた位置にあり、直径は約66,000光年(天の川銀河の2/3)である。地球から見てほぼフェイスオン(視線方向と銀河円盤軸の向きが同じ)であるため、渦巻の様子がとてもよくわかる。

 

 宇宙空間に打ち上げられたJWSTに搭載された中間赤外線観測装置は5~28㎛の波長領域にある電磁波を測定する。この波長の赤外線は地球の大気によって吸収もしくは熱されてしまうため、地球上の望遠鏡から観測することは困難である。また-266℃と極寒の中(熱力学において存在可能な最低温度)で正常に動くことができるように開発された観測装置である。

 

 かつてIC 5332の姿はハッブル宇宙望遠鏡のWide Field Camera 3(WFC3)の紫外線・可視光線観測によっても捉えられている(図2)。図2をみると2つの渦巻をしっかりと分ける暗い領域が存在する。この暗い領域をJWST(図1)でみると、渦巻の形を反映する連続的なもつれ構造として観測される。これは紫外線・可視光線は渦巻間にあるダスト(塵)に散乱されるため暗く映るが、赤外線はその暗い領域を通り抜けることができるということが要因である。

 

 今回の観測によって渦巻銀河の詳細な構造の研究がなされることが期待される。