JWSTによって捉えられた「創造の柱」の姿

11月5日

 

 

 

図1 ( C ) NASA, ESA, CSA, STScI; J. DePasquale (STScI), A. Pagan (STScI), A. Koekemoer (STScI)

ジェームズ・ウエッブ宇宙望遠鏡(JWST)の中間赤外線観測装置(MIRI)によって捉えられた「創造の柱」の姿。中間赤外線ではガスや塵の光を捉えるため、ガスや塵で覆われた若くて赤い星の姿を捉えることはできない。

 

 

図2 ( C ) NASA, ESA, CSA, STScI; J. DePasquale (STScI), A. Pagan (STScI), A. Koekemoer (STScI)

JWSTの近赤外線観測装置(NIRCam)によって捉えられた「創造の柱」。図1とは違い、若くて赤い星がたくさん写っている。

 

 NASA/ESA/CSAは10月28日、ジェームズ・ウエッブ宇宙望遠鏡(以下JWST)の中間赤外線観測装置(MIRI)、近赤外線観測装置(NIRCam)によって観測された「創造の柱」の姿を公開した(図1、2)。図1のMIRIの画像では星はあまり写っていないが、主に塵やガスで構成された星間物質がグレー色で詳細に写されていることがわかる。図2の近赤外線観測装置による画像では、星間物質とともに多数の若くて赤い星の姿が写されている。今回公開された画像は、創造の柱の中で塵やガスがどのような運動をして、どのように星が形成されるかを理解するための手掛かりとなるとしている。

 

 創造の柱はへび座の方向6500光年の距離にある星雲M16(わし星雲)の中心部にある星形成領域である。1995年と2014年にハッブル宇宙望遠鏡(HST)の可視光によってその姿が捉えられている。その他にもハーシェル宇宙望遠鏡などの望遠鏡によってその姿が確認され、天文学者たちに革新的な情報をもたらしてきた。

 

 創造の柱では無数の星が多く作られている領域であり、できたばかりの若い星が多く存在する。若い星はガスを放出しているため、MIRIで観測するとガスが邪魔で星の姿を捉えることができないが、ガスを放出していなければその姿を捉えることが可能である。今回JWSTによって撮影された図1において、創造の柱の縁に存在するクリムゾン(赤色)をした星が、そのようなガスを放出していない若い星である。また図1に写っている青い点は年老いた星の場所を示している。青い星はガスや塵で構成された外層を脱ぎ捨てているため、このような青い点として映る。また図1では塵やダストで構成された星間物質の姿がグレー色ではっきりと写っていることがわかる。上部ではフクロウが翼を広げたように赤色の領域が広がっているが、これは想像の柱から塵が拡散されて、塵が冷えている状態を示している。

 

 図2の近赤外線観測装置(NIRCam)によって撮影された画像では、星間物質と共に多数の星の姿が映されている。創造の柱内で多数の若い赤い星が写っているが、この赤い星が自己重力でつぶれると、徐々に加熱されて、明るく輝く星になる。また創造の柱の一番右側の柱は溶岩が流れ出るように赤い波打った線になっているが、これは若い星が形成される過程において、ジェットが噴き出し、そのジェットがまわりの塵やガスと相互作用を及ぼすことによってこのような形になる。

 

 創造の柱はほうきの柄のように下部から上部に塵やガスが突き出た格好をしているが、下部から上部までの大きさは我々が住む太陽系の大きさを超えているとしている。

 

 今回JWSTのMIRIによって観測された創造の柱のデータは、これまでに他の宇宙望遠鏡によって観測されたデータよりも正確なものであるため、3次元的な創造の柱の姿を再現することが可能であり、ガスや塵がどのように運動して星が形成されるかを研究する上で重要な手掛かりになるとしている。またNIRCamのデータを用いて、創造の柱内の星の密度、ガスや塵の質量を正確に見積もることが可能であり、数百万年にも及ぶ星形成過程の理論モデルが構築されることが期待されている。